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病院側は「出血の所見がなかった」と主張

 2017年10月、中島さん夫妻は、ついに提訴に踏み切った。莉奈ちゃんの死から約7年後のことだった。

「ギリギリまで話し合いで解決を図りたいと思っていましたが、協力医の先生の書簡まで無視されたのが本当にショックで、もう裁判を起こすしかないなと思いました。提訴する以上、とにかく何が起こったのかをはっきりさせてほしいという一心でした」(邦彰さん)

 裁判で最大の争点となったのは、莉奈ちゃんの死因だった。原告側は協力医の意見書など、出血死であったことを裏付けるための材料を揃えたものの、病院側は「莉奈ちゃんの容態が悪化した際に行なったエコー検査では、出血の所見がなかった」と主張。議論は平行線をたどった。

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「肝心のエコー写真は最後まで提出されませんでした。警察が意見を聞いたお医者さんも明らかに出血死だと言う人が大半だったけれど、相手が大きい病院ということもあって、自分の名前を出す必要がある意見書は書けないと言われた、とも聞きました。医者の世界にますます不信感を抱くようになりました」(邦彰さん)

『真実を語りたいとずっと悩んできた』E医師が陳述書を提出

 ところが、2017年12月に代理人弁護士のもとへ一通のメールが届いたことから事態は一変する。メールの差出人は、莉奈ちゃんが亡くなった当時、済生会横浜市東部病院で勤務していたE医師。病院側が出血は確認できなかったとするエコー検査の約1時間後から、莉奈ちゃんの救命処置に加わっていた人物だった。

©iStock.com

「裁判についての新聞記事を見て、つてをたどって連絡してきたそうです。莉奈ちゃんの救命方針を決めるためにエコー検査をし、その際に大量の出血を確認したというお話でした」(代理人弁護士)

 後に裁判の場でE医師が提出した陳述書にはこう記載されている。

《私が行ったエコーでは、肝被膜下と腹腔内に、大量の血液貯留を示唆する画像が確認できた(略)その前の急変時のエコーでそれが確認できないはずはないだろうと思ったのです》

《私の実施したエコーに先立つ午後4時過ぎのレントゲン写真も確認しました。このレントゲン写真にも肝臓右葉から下縁にかけてくっきりと映っていないという所見があり、それは腹腔内の液体貯留を示唆するものですが、本件の場合、この液体は血液であると見て間違いありません》

 中島さん夫妻はE医師から弁護士経由で、手紙も受け取ったという。