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「『医師として志があるので、真実を語りたいとずっと悩んできた』と書かれていました。病院内でも、莉奈ちゃんの死因は出血死だと訴えてくださっていたそうです。しかし、ミトコンドリア異常症という専門外の難病の名前が出てきたことで、何も言えなくなってしまったということでした。

 出血の所見がないという病院側の主張を崩せずにいた中で、エコーを撮って出血を認めた先生からの申し出があったのは心強かったですし、涙が出るほど嬉しかったです」(朋美さん)

莉奈ちゃんが稀な難病だと主張した病院の報告書

中島さん夫妻にとって予想外の出来事が

 しかし、E医師が撮影し、印刷したはずのエコー写真は、病院内で保存されていなかった。さらに病院側は、裁判時には別の病院へと移っていたE医師の説明内容を「信用できない」などと一蹴。言い分を変えることはなかった。

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「2018年1月に遺族として意見陳述したときのことは忘れられません。娘の大切さや真相究明への強い思いを5分間にわたって話し、法廷もシーンとして聞き入ってくれていたのですが、陳述が終わって私が座るよりも先に、相手の代理人が挙手もなく立ち上がって『結局解剖の写真は持ってるんですか』と言い放ったんです。生々しい話をぶつけてくる挑発的な姿勢がショックで、今でも鮮明に覚えています」(朋美さん)

 民事裁判での対立が続く中、刑事手続の方では、2019年11月に肝生検を行なったC医師と術後管理にあたった元研修医のB医師が書類送検された。すると同年12月、中島さん夫妻にとってまたも予想外の出来事が起こる。

 B医師が中島さん夫妻への謝罪を申し入れてきたのだ。

上級医に逆らうことができなかった B医師の後悔の念

「正直、謝罪を受けるかどうかはかなり躊躇しました。手紙を送ってから5年以上も無視されていたのに、書類送検された途端に謝罪だなんて、罪を軽くしたいだけなんだろうと思いましたし、会いたくない気持ちも大きかったです。

 でも、民事裁判でも本当のことを言うし、全面協力すると言われて……陳述書はもちろん、法廷に証人尋問で立つ覚悟もしていると。それを聞いて、少しでも裁判が前に進むならという思いで受け入れることにしました」(朋美さん)

 設けられた謝罪の場で、B医師は真っ青な顔で頭を下げた。中島さん夫妻はB医師から、当時のありのままの経緯が記された手紙も受け取ったという。

「莉奈の様子が回復しないことに焦って、血液検査ぐらいはと上級医に進言していたそうです。でも腹帯を緩めろと言われただけで、様子見の指示は変わらず、研修医の立場でそれ以上判断できる環境ではなかったと。警察からの事情聴取の際も病院側から口止めされ、謝罪も弁護士から止められていたという話でした。本人も苦しんでいたのは伝わりました」(邦彰さん)