4/4ページ目
この記事を1ページ目から読む
ベビー・ゴステロを通して渡世の縁ができたものの、最後は肥田に拳銃を突きつけて、
「いままではあんたが一番偉かったけど、今日からはワシが一番偉いんじゃ!」
との啖呵を切って、組を離れ、それ以来、ずっと一本独鈷を通してきたこと。
「けど、いまから考えたら、これ、ワシのほうがよほど外道ですわ。こんなできの悪い男はないと、いまは反省しとりますんや」
と打ちあける天野に、ボンノは、
「そら、おまえ、たまたま悪い親分に当たっただけやないかい。なあ、政治家でもええ政治家もおれば、悪いのんもおる。ヤクザでも悪い親分もおれば、ええ親分もおるんや。誰も彼もが外れとは限らんぞ」
と言って、なお口説いた。
それでも天野は容易に首をタテに振ろうとしなかった。
とは言え、心はすでにかなりの部分でボンノに傾いていたのだが、その話にすぐに飛びつくのは、男の作法、嗜みとしてはどうか──と、なんとなく天野には思われたのだ。ただ、それだけのことだった。
この件があって、ボンノはなおのこと天野に惚れこんだ。本拠とする神戸から大阪に来るたびに天野を呼び出し、連れて歩くようになったのだ。
![](https://bunshun.ismcdn.jp/common/images/common/blank.gif)