JR只見線が10月1日、11年ぶりに全線開通した。
同線は、会津若松駅(福島県会津若松市)と小出駅(新潟県魚沼市)を結ぶ135.2kmの鉄道だ。福島県内では只見川の峡谷に沿って走る秘境路線でもある。
そのうち、最も自然環境や地理条件の厳しい会津川口(福島県金山町)-只見(同県只見町)間の27.6kmが、2011年7月の豪雨水害で寸断された。JR東日本は同区間をバス転換する方針を提示したが、福島県など地元自治体が強く運行再開を求めたほか、財源負担までするという異例の条件を持ち出したため、なんとか復旧にこぎ着けた。被災した赤字路線はそのまま廃線にするというJRの方針が強まる中では、極めて珍しい事例となった。
ただ、鉄路はつながるだけでは役に立たない。使いやすい運行ダイヤであってこそ「乗れる路線」になる。にもかかわらず、復旧区間は「極めて不便な時間設定」と指摘する人もいて、せっかくの運行再開を「利用拡大」に結びつけられるかどうかは不透明だ。
「では、復旧後は乗りますか」と地元民に尋ねると…
「ようやく再開した」「本当に長かった」。運航再開区間の住民に話を聞くと、必ずと言っていいほど、こうした声が出る。
「では、復旧後は乗りますか」と尋ねると、「乗らない」と言う人が多い。「田舎では車でないと不便だから」というのが大きな理由だが、「乗ろうと思っても、乗れないダイヤにしかなっていない」と漏らす人もいる。
「実は、只見町にとっては非常に厳しいダイヤなのです」。只見町役場で鉄道復旧対策に取り組んできた地域創生課の角田祐介さんが説明する。
運行が再開された只見-会津川口間には、1日に3往復しか列車が走らない。これまで折り返し運転になってきた会津川口-会津若松間でさえ1日6往復だ。都市部の人には驚かれるだろうが、その半分しか走らないのである。
ちなみに只見駅の発着時間は、只見発が午前7時11分、午後2時35分、午後6時。只見着は午前9時7分、午後4時21分、午後7時52分である。
これら3往復は、いずれも会津若松-小出間の全線を通して結ぶダイヤだ。逆に言えば、只見線の全区間をつなぐ列車は1日に3往復だけで、只見-会津川口間はこれしか通らないのである。
その結果、どんな問題が起きるか。角田さんが指摘する。
只見駅ではなく会津若松駅を目指して通過するダイヤになっている
「会津観光の一環で只見に泊まっていただくにしても、翌日に会津若松方面へ行くには実質的に午前7時11分だけです。宿泊施設で朝食を食べる時間があるかどうか。その次となると、午後2時35分発。この列車が会津若松駅へ到着するのは午後5時24分なので、もう夕方になってしまいます」