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 只見町と言えば、有名なのは水力発電だろう。最も知られているのは、水力発電所としては国内第2位の出力を誇る田子倉ダム(電源開発)とそのダム湖だ。只見駅から8kmほど離れており、列車で訪れた場合は、只見町インフォメーションセンターでレンタサイクルを借りるか、タクシーでアクセスする。

 レンタサイクルでは「駅から1・5kmほどの場所にある県立只見高校に行きたいとおっしゃる方がいます」と菅家さんは言う。

13人の野球部員が沸かせた22年のセンバツ高校野球

 只見高校は部員13人の野球部が、2022年春の選抜高校野球大会に出場し、一躍注目された。只見町と会津若松市出身の選手が主力で、極めて地元色が濃かったので、町民も盛り上がった。その校舎を見に行く人がいるのである。

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只見高校野球部の活躍を伝える地元紙が大きく引き伸ばされて張られていた(只見町役場)

 ちなみに、同高には11年前の災害まで、新潟県側から只見線で通学する生徒がいた。残念ながら被災後はいなくなり、全校90人の生徒に新潟側の沿線からの進学は途絶えた。

 これらの「見て回れるスポット」はあるにしても、列車で訪れる人がもっと手軽に只見町らしい体験はできないか。

 町役場が目を付けたのは三石神社だった。三つの岩が御神体になっていて、神秘的な場所だ。平安時代からの歴史があるという。駅から徒歩10分ほどの場所に鳥居があり、本殿はそこから十数分かけて山道を登る。

二の岩。夏の暑い盛りでも岩肌から水が染み出してくる(三石神社)

 まず、杉の巨木が林立する中を歩く。「只見町銘水10選」に入った清水があり、さらに進むと「一の岩」が見える。岩穴に頭を入れて祈ると頭が良くなり、頭の病気が治るのだそうだ。次に「二の岩」。「泪(なみだ)岩」とも言われていて、夏の日照りでも岩から水が染み出し、これを目につけると目の病気が治るとされている。最後が「三の岩」。「縁結びの岩」として知られている。岩がまるで屋根のようになっていて、真下に社殿が建てられている。岩の上には木が何本も生えていて、この世のものとは思えない雰囲気だ。岩肌にはたくさんの穴が開いており、こよりで5円玉を吊るして、縁結びを願う。

 菅家さんは「最近訪れる人が増えています」と話す。

 三石神社については、地元集落と県外の大学生が協力して参道整備をしたほか、同神社を核にした観光開発を行おうと、役場が「日本縁結び学会」(理事長・渡部勇夫町長)を設立した。そして縁結びに絡めたまちづくりを考える場にしたり、グッズ開発などを進めたりしようとしているが、「安倍晋三・元首相の銃撃事件以降、元統一教会の問題がクローズアップされて、宗教関連へ社会の目が厳しくなっています。慎重に進めなければ」と役場の角田さんは語る。意外なところに余波があるものだ。