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11年7月の豪雨水害からJR「只見線」が運航再開。しかし「これでは乗れない」…幕末から歴史に彩られた秘境路線は、また苦境に陥ってしまうのか

蘇った秘境路線#1

2022/10/05

genre : ライフ, 社会

 只見-会津川口間だけではない。新潟県側の小出-只見間を結ぶダイヤにも課題がある。只見駅前の「只見町インフォメーションセンター」で観光案内を担当している「会津ただみ振興公社」の菅家智則さんは、「例えば小出駅から只見駅へ来るには、始発なら午前7時1分着。只見町ではまだ店も開いておらず、どうやって過ごしてもらったらいいか頭を悩ませます。次は午後2時25分着なので、ランチタイムが終わっていて昼食もできません。町内の観光スポットを回るにも遅すぎます。結局のところ、只見駅で下車するというよりも、会津若松駅を目指して通過するダイヤになっているように感じます」と語る。

 せっかく復旧するというのに、これでいいのか。

「JRは1日3往復で運行再開するという話だったので、とりあえずこのダイヤで再スタートするしかありません。でも、工夫すれば1日4往復にできる余地があるのです」。角田さんは実現可能な案を持っている。

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R只見線が不通だった区間(只見町広報より)

 午前に会津若松駅を出発し、会津川口止まりとなって、また会津若松駅に戻る列車がある。この列車が会津川口駅で停車するのは、午前9時40分から午後0時29分と、3時間近い。それだけの時間があれば、会津川口駅から只見駅まで足を延ばして往復でき、なおかつ1時間ほど余る。この時間帯、会津川口-只見間を走る列車はないので線路はガラ空きだ。当然、往復列車が走れる。

「只見線は単線だから、行き違いダイヤの組み方が難しいのは分かっています。けれども、この往復列車が走れば、只見観光には大いにプラスになるのです。会津川口駅がある金山町役場も『いいじゃないですか。会津川口止まりではなく、只見駅で折り返すダイヤにしましょう』と言ってくれています」と角田さんは話す。

国道と只見線の線路が並走する。運行再開後は撮影ポイントになるのだろうか(只見町)

 一方、新潟県側でも只見町での利用が格段に便利になる工夫ができる。

もし、小出発の最終列車を、只見駅まで1駅運行区間を延ばしたら…

 小出駅から只見行きの最終列車は、午後4時12分発とかなり早い。只見駅には午後5時半に着く。だが、小出駅の本当の最終列車は午後7時59分発で、只見駅の一つ手前の大白川駅(新潟県魚沼市)が終着となる。あと1駅なのに、只見駅までは運行しない。

 この運用は翌朝、小出方面へ向かう始発列車に大きな影響を及ぼす。終着列車が夜を明かし、翌朝の始発列車となる大白川駅では午前6時22分発のダイヤが組めるが、只見駅の始発は会津若松駅から延々3時間近くかけて来る列車を待たなければならないので午前9時半になる。