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「運行を再開しても、すぐに空気を運んでいるという批判が出てくるでしょう」と星さんは予測している。

 だが、星さんは再開区間だけ切り取って乗客数を計ることに、どれだけの意味があるのかと疑問に感じている。

只見線があるからこそ台湾から観光客が来てくれる

「台湾から来る人は四季の絶景を全て味わいたいので、1年に何度も来ます。トータルで5回も10回も来ている人がいます。その経済効果をどう見るか。只見線があるからこそ来るのです。飛行機に乗り、新幹線に乗り換え、宿泊し、お土産を買ったり、食事をしたりします。何度も来る人は、そのたびにどこか他の地区へも足を伸ばすので、そちらへの経済波及効果もあります。JR自体、只見線の運賃は大した額ではなくても、奥会津にアクセスするまでの新幹線代などが収入としてあるのです。スイスのアルプス鉄道と同じような効果があるのではないでしょうか」と訴える。

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 そう考えると、鉄道の線区を細切れに分けた乗車人員で、経済効果が計れるのかどうか。もちろん路線や地域状況の違いが大前提としてあり、鉄路をいかそうとする人々がいるかどうかという問題もあるだろうが。

第1只見川橋梁=星賢孝さん撮影

 さらに星さんは、「交通機関には鉄道、自動車、飛行機、船とありますが、これらのうち施設まで全て自分で持っているのは鉄道だけです。道路は国、都道府県、市区町村が整備します。空港も行政が主体。船着場もそうでしょう。この違いが鉄道事業者の競争力を弱め、100年に1度の災害が頻発する時代に、壊れたらもう直さないという線区を生んでいます。ならば他の交通機関と比べながら、施設は誰が所有して維持するのが適当なのか、整理して考える時期になっているのではないでしょうか」と指摘する。

 そうした意味では、只見線のような上下分離方式が、他の赤字路線でも一つの解決策になっていくのかもしれない。

根岸-会津高田間=星賢孝さん撮影

トータルでどう利益を上げて全体としての経営を維持していくか

 11年ぶりに全線開通した只見線で、運行が再開された区間を走る列車は、1日に3往復しかない。同区間まで営業運転してきた列車が、再開区間の30km弱を延長運転する形になるので、営業経費はかなり安く済むだろう。施設の維持経費は行政が持つから、再開区間だけを切り取ったJRの赤字額は、被災前に比べて劇的に減る。

 一方、只見線が生み出す経済波及効果は被災前と比べ物にならないほど大きくなっている。

「他の鉄道会社がやっているように、乗る乗らないは別にして只見線があるから来るという人をターゲットにした商売をJRが地元と協力して行っていくことも必要でしょう。細切れにした線区のコストを云々するのではなく、トータルでどう利益を上げて、全体としての経営を維持していくか。JRを含め、只見線や奥会津に関わる皆で考え、地域を残す方法を模索したいと思います」

 星さんの言葉は力強い。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。