女優、映画監督、ミュージシャン…年々活躍の場を広げる、のんが来年30歳を迎える。最新主演映画『天間荘の三姉妹』(10月28日全国公開予定)の魅力、そして節目の時を前に駆け抜けた20代を振り返った。(全2回の1回目/#2を読む)

©文藝春秋 撮影/鈴木七絵

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「怒りの感情って結構お気に入りなんですよ」

――のんさんはこれまでの人生で壁にぶつかると、どう対処してきましたか?

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のん 私、あまり壁を感じたことがなくて。そもそも何かに挑戦するときはハードルを低く設定するよう心掛けているんです。あらかじめ越えられる程度の低さに設定しておけば、「えいっ!」と飛び込みやすいし。

いざ物事を始めたら始めたですごく集中しちゃうから、途中で「これは壁だ」とも感じなくて。ちょっときつくなったら、美味しいものを食べて、いったん寝て、すっきりしてから取り組むと何とかなるし(笑)。結構マイペースですね。

――以前のインタビューで、「喜怒哀楽の“怒”の感情は飼い慣らして付き合う」と語っていたのも印象的でした。

のん そうそう。怒りの感情って、私の中では結構お気に入りの感情なんですよ。

©文藝春秋 撮影/鈴木七絵

――お気に入り?

のん 怒りも日常のスパイスに変えられるから。日常のなかでイラッとしたら一緒にいる人に軽くひじ鉄をするとか、動物みたいに「ウーーッ!!」とうなって見せるとか(笑)。音楽活動で自分が書く曲もどれも怒っているし。

わざと態度に表すことで、明るいエネルギーに変換しちゃうんです。こうするとあまりストレスもたまらないし、怒りもへっちゃらになる。いい映画を観て、喜んだり哀しんだり楽しんだりするのと同じように、怒りの感情ともフランクに付き合っていますね。

――ご自身の主演作では16年に声優をつとめた『この世界の片隅に』が大ヒット。20年の『私をくいとめて』では恋に奮闘する“おひとりさま”のアラサー女性を演じ、今年9月公開の『さかなのこ』では、さかなクンがモデルの主人公を演じて話題を呼びました。年齢やジェンダーにとらわれずさまざまな役にチャレンジされてきました。