2022年11月6日、毎年開催されている「ぎふ信長まつり」に木村拓哉さんが来場し、岐阜市の人口を上回る46万人が押し寄せた。かつてないほどの盛り上がりだ。
「カッコよかったね! 生きててよかった!」と感極まって涙を流す人もおり、キムタクの“人気”という言葉では言い表せない“カリスマ性”が光った結果だとも言えるだろう。
一方、韓国の梨泰院で雑踏事故が発生した直後とあって、多くの観衆をどうさばくのかにも注目が集まっていた。結果として大きな事故もなく無事にイベントは終わった。しかし、実際の現場では問題点もいくつか見受けられたのだ。
ノーギャラで来場した“キムタク”
コロナ禍の影響で今年は3年ぶりの開催となったぎふ信長まつり。
中止していた間の予算を一気に割り当てたとしても、木村拓哉さんを呼ぶのはなかなか簡単ではないだろう。今回、来場が決まったのはいったいなぜなのか。
きっかけは、伊藤英明さんだった。
ぎふ信長まつりのメインイベントは「信長公騎馬武者行列」というもので、戦国武将や火縄銃鉄砲隊などが市内の大通りをパレードするのだが、通常は市民らの公募で信長役が決まる。しかし、2009年には岐阜市制120周年を記念し、岐阜出身の俳優・伊藤英明さんが信長役を務めていた。
来年公開となる映画『レジェンド&バタフライ』で主人公を演じる木村拓哉さんの共演者が伊藤英明さんだった。ぎふ信長まつりの話を聞いた木村拓哉さんは映画を盛り上げるために、と、ノーギャラを決めたのだという。
実は、今年の信長公騎馬武者行列は信長役が乗る馬の手配ができなかったため、中止となる予定だった。しかし、『レジェンド&バタフライ』を配給する東映が、馬や衣装を全て無償で用意することとなり、「キムタク信長まつり」の狂騒が実現した。
木村さんと伊藤さんの参加が発表されると、岐阜市内外は大騒ぎに。例年は会場を訪れた人が自由に観覧できるが、今年は初の事前申し込み制を導入した。
すると、1万5千人の観覧席に対し、96万人を超える応募が殺到。64倍の競争率を勝ち抜いた当選者のみが観覧できることとなった。それでも多くの人が岐阜に押し寄せることが予想され、群衆警備は当初から大きな課題に挙げられていた。