2022年は鉄道にとって節目の年であった。1872年に新橋~横浜間が開業して150年、というわけだ。150周年だからといって満員電車が消滅するわけでもないので、目下のお客にすればどうということはないのだが、節目は節目。かくいう筆者も150周年にかこつけた本を書いている。

 で、節目なのは開業150周年ばかりではない。別に狙い定めたわけではないだろうが、とりわけ新幹線が“周年”だらけだ。ひとつは山陽新幹線で、50年前の1972年に新大阪~岡山間が開業した。次いで1982年には東北・上越新幹線が開業。30年前の1992年には、いまや東海道・山陽新幹線の看板になっている「のぞみ」が運転を開始している。

 そしてその「のぞみ」のデビューと同じ年。怒られてしまうかもしれないが、“意外な場所”に新幹線が通っている。1992年7月1日、福島~山形間の山形新幹線開業である。

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新幹線30年目の終着駅「山形」には何がある?

「のぞみ」デビューと同じ年に開業した「山形」には何がある?

 いま、山形新幹線が通っているのは福島~新庄間。その間、おいしい牛肉でおなじみの米沢や将棋の町・天童、銀山温泉の玄関口たる大石田などを経る。県都の山形もそのひとつで、山形新幹線開業当時は終着駅になっていた。いやしくも県都なのだから、新幹線が通ってもなんの文句もないだろう、と言われるかもしれない。

今回の路線図。開業して30年になる山形新幹線の終着駅「山形」

 しかし、である。山形という町は、人口25万人を少々下回るくらい。新幹線の駅がある都道府県庁所在地の都市としては、山口県山口市に次いで少ない。

 山口市の場合は県庁の最寄り駅は新幹線の新山口駅ではなく山口線山口駅で、さらに下関市という県下最大の都市を別に持つ。それに、山陽新幹線は山口が目的だったわけではなく、山陽地域を貫いて博多まで結ぶのが狙いだった。

 ところが、山形新幹線は徹頭徹尾山形が目的である。のちに新庄まで延伸したが、いまでも列車の半分は山形駅停まりだ。山形県都のターミナル・山形駅は、分相応か不相応かはわからないが、とにかく立派な新幹線のターミナルなのである。そんな山形駅に何があるのか。新幹線「つばさ」に乗ってやってきた。

 

「山形」に新幹線が来たのは結構な“荒技”が必要で…

 山形新幹線は、新幹線といっても本当の意味での新幹線とは少し違う。東京から福島まではれっきとした新幹線だが、そこから先は正しく言えば“奥羽本線への乗り入れ”だ。

 新幹線と在来線は基本的にレールの幅が異なっているが、ここでは在来線を新幹線に合わせて新幹線の車両が入れるようにした。いわゆる“新在直通”というやつで、簡単にいえば多少荒技をもってして、山形に新幹線がやってきた、ということになる。