金銭面でも頼りになる年上妻

 違いはあって当然で、それを受け入れて楽しめるかどうかということなのだろう。では逆に付き合って年の差を感じることはなかったのか。

「最初のうちは感じなかったけど、夫の友達とか部下とかに会うようになると、みんな年齢が若くて自分だけかなり年上だから気まずいし、こんな若い子たちと仕事しているんだとびっくりした。むしろ夫の上司に年齢が近かったので、会社の飲み会に連れていかれたときは上司に『うちの夫、出世させてくださいよ』って接待してました」

 社会経験の豊富な年上妻らしく、金銭面でも頼りになるのは彼女のほうだったようだ。

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「当時の夫は貯金なんて全然なかったし、新卒で入った会社をやめて1年くらいは次につなげるため業界で実績を積もうと頑張っていたんだけど、その間は私が食べさせていた。辞めた理由は配属された広告営業じゃなく、制作の仕事をしたかったからで、『仕事やめてもいい? 給料なくなっちゃうけど』って言われたんだけど、『やりたいことあるならやりなよ』って言いました」

 彼女の協力もあって、夫は目標の広告マンとして成功したという。当時は「お互い仕事で成功して、子どもをつくって、それからまた二人でやりたいことを続けていくというのが理想」と考えていたという。

子どもをつくるためにやるのが嫌になり……

 しかし、最終的に彼女は離婚してしまっている。原因は彼女が40歳を超えたあたりから、子作りをめぐる考え方の相違が大きくなってしまったためだ。

「最初は親だよね。特に向こうの親。結婚の後期には『孫まだか?』ってすごい言われました。酔った向こうのお父さんに『こいつ(息子)がダメなら俺がつくってやりたいくらいや』って言われたこともあった。セックスはそんなにしていなかったわけじゃないけど、ある時から子どもをつくるためにやろうっていうのが見え見えになってきて、それが嫌で次第にセックスレスになっちゃった」

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 決して子どもが欲しくなかったわけではないが、仕事を含めた自分の生き方も大切にしたかった。

「当時の私はミュージシャンの仕事が順調で、月に20本以上のライブもあって仕事はやめたくなかった。出産で表舞台から1年間も消えたらお客さんにもミュージシャン仲間にも忘れられるかもって怖さもあった。いま考えたら大丈夫だったと思うんだけど、あのときは仕事をやめることは考えられなかった」