私自身、結婚するまで男中心の身勝手な性の享楽情報ばかりで女性の性の事実についてまともな知識を持っていませんでした。妻は月経がかなり重いタイプで、私は時に仮病を疑うこともありました。月経が女性の心身にどんな影響をもたらすのか全く知らなかったのです。そのため気持ちはすれ違うばかりでした。
関係を破綻させないために行なった“コミュニケーション”
このままでは関係の破綻につながるのではないかと思い、月経や性について勉強したことが、私の性教育の原点なのですが、男性向けの講演会ではこの「月経」と二人の関係性について話すことにしています。相手と向き合いコミュニケーションをとり、関係を築くためには、まず「正しく知る」こと。相手のことを知らなければ、共感や思いやりの気持ちを持つことはできません。そのためには、男性が学ぶ機会が必要なのです。
最近では、性にかかわる科学的知識を教えるYouTubeなど、インターネットでの優良なコンテンツが増え、影響力が大きくなっていることは喜ばしいことだと思います。しかし、現状、視聴者の多くは女性のようです。やはり男子への正しい性情報、性教育が圧倒的に不足しています。いくら女性が学んでも、男性が変わらなければ、ジェンダー平等や性の多様性の理解も広がっていきません。この意味で「男子への性教育で社会は変わる」と言っても過言ではないでしょう。
また、性教育は、学校で一度教えたからといって、すぐに理解できるとは限りません。学校以上に親の考え方やふるまいが子どもに与える影響は大きいものです。その親も科学的な学びの機会がなかった世代なので、性について抑制的に語ることしかできません。子どもばかりでなく親や教師の世代の男性たちが性について学ぶこと、これは次の時代の大きな大きな課題になってきたと思います。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。