アニキのニックネームで慕われた、『マジンガーZ』(’72年)や『仮面ライダー』シリーズの主題歌などで知られる歌手・俳優の水木一郎さんが去る12月6日(火)に肺がんのため亡くなった。享年74歳。

 所属事務所の発表によると、水木さんは2021年4月末に肺がんが発覚。放射線治療や薬物療法を施しつつ入退院を繰り返し、約1年7か月にわたり闘病生活を続けていた。

 脳転移やリンパ節転移、髄膜播種を伴うという非常に厳しい症状ながらも、“生涯現役”をスローガンに通院とリハビリに励みつつ活動を継続。11月23日(水)の長野県・小諸市が地方巡業のラスト。11月27日(日)の東京・よみうり大手町ホールで開催された「水木一郎・堀江美都子 ふたりのアニソン#19」が事実上のラスト・ステージとなった。

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©文藝春秋

「燃えよドラゴンズ!」に『マジンガーZ』。しかし…

 水木さんは1968年に歌謡歌手としてデビュー。だが歌謡曲のヒットにはめぐまれず、’71年に石ノ森章太郎先生原作の『原始少年リュウ』で初めてTVアニメの主題歌を歌唱。

若き日の水木一郎さん

 以降、日本コロムビアを中心に『マジンガーZ』、『バビル2世』(’73年)、『ルパン三世』(水木さんは’78年度のエンディングを歌唱)などのTVアニメや『超人バロム・1』(’72年)、『仮面ライダーX』(’74年)などの特撮ヒーロー、そして中日ドラゴンズの応援歌「燃えよドラゴンズ!」等幅広いジャンルの歌を次々に歌い上げ、“アニソン(アニメソング)の帝王”、そして“アニキ”のニックネームで呼ばれるなど国民的歌手として活躍するようになった。

 そんな水木さんには自身の歌手人生を悩んだ時期もあった。当時はまだ“アニソン”などという言葉はなく、アニメや特撮番組も“TVまんが”と呼ばれ、一般の映画やTVドラマよりワンランク下のものとされ、その主題歌も音楽界的には格下に見られていた。

 そんな悩みを吹き飛ばしたのが『マジンガーZ』だった。

“代わりの”主題歌だった「ゼーーーット!!」

 近年ではアイドルユニット・ももいろクローバーZの“Z”の由来や、メンバーが水木さんといっしょに「ゼーーーット!!」と叫んだり、すっかりアイドル界隈でも有名になったが、その“ゼーーーット!!”の雄叫びこそ水木さんの“発明”だった。

 この曲、じつは本来主題歌を想定していた歌「Zのテーマ」が挿入歌に回され、急きょ用意された“代わりの”主題歌だった。