目の前に新幹線の巨大なアーチ橋が見えてきた。津軽線と別れたわが列車は、その橋をくぐると勾配を登りながら弧を描くようにして新幹線に寄り添い、大平トンネルの直前で新幹線の線路に吸い込まれた。

左側のレールは両方に踏まれるので損な役回りだ

 ご存じのとおり、新幹線の線路幅は1435ミリメートルなのに対して、在来線のそれは1067ミリメートルと異なる。そのため共用区間は新幹線のレールの内側にもう1本レールを敷いた「三線軌条」という仕組みになっている。正確に書くと、外側の2本のレールを新幹線が、左側と内側のレールを貨物列車が走るようになっている。左側のレールは新幹線と貨物列車の両方に踏まれるので損な役回りだ。

新幹線の線路と合流する

いよいよ青函トンネルが近づいてきた

 しばらく走ると前方に駅が見えてきた。北海道新幹線の本州側最北端の駅「奥津軽いまべつ駅」だ。するとわが貨物列車は、駅の直前のポイントでいったん本線を離脱する。駅の左側の側線に入っていき、8時06分に停車した。後から来る新幹線「はやて93号」に道を譲るために9分間停車する。

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 ふとトンボに目をやると、完全に動かなくなっている。心配だ。思考が転回し、さっき通った「火葬場通」という踏切を思い出す。

 8時09分、我々と駅を隔てて向こう側に上りの貨物列車が到着した。昨夜22時27分に帯広貨物駅を出発して今夜19時27分に隅田川駅に着く3058列車と思われる。

いったん「三線軌条」から離れて、「奥津軽いまべつ駅」の側線に入ってゆく

 そして8時11分、我々を待たせていた「はやて93号」がやってきて、8時12分に出ていった。

 3分後の8時15分、わが3059列車は再び走り出すと、すぐに本線に再合流した。いよいよ青函トンネルが近づいてきた。

トンネル内での新幹線とのすれ違いは…

 貨物列車で青函トンネルを通るにあたって、一つ楽しみにしていたことがある。トンネル内での新幹線とのすれ違いだ。迫力もさることながら、遠くに見えた光が線になって近づいてきて、瞬間的に後方に消え去っていく光景は、幻想的で中々いいものだという話を聞いていたのだ。トンネル内ですれ違えるかどうかは前もって調べようと思えば調べられるのだが、今回はあえてそれをしなかった。予期していないときに、突然経験するほうが感動も大きくなるからだ。

 奥津軽いまべつ駅を出発してから青函トンネルまでの間に7つのトンネルがある。そのうちの3つ目の第二今別トンネルに入る直前で、突如向こうから新幹線の上り列車がやってきてすれ違った。トンネルに入る直前だったことと、先方の列車が速度を落としていたため、「幻想的」とは程遠い、普通のすれ違いになってしまった。そして、その後こちらの列車が津軽海峡を越えて北海道側に渡って再び在来線に降りるまで、新幹線とすれ違うことはなかった。