駅前広場も玄関口にふさわしい規模を持つ。中央に歩行者専用の広場が設けられ、南側にはタクシー乗り場、北側にはバス乗り場。アミュプラザを中心に、観光客から地元の人たちまで、とにかく人通りが絶えることがない。こうした賑やかな雰囲気も、さすが県都のターミナルである。
「きっと駅前にいるのは西郷さんだろう」という予想は外れ…
PCR検査場のテントでほとんどが覆われていた歩行者専用の広場の端までゆくと、「若き薩摩の群像」という像があった。幕末の1865年、薩摩藩がヨーロッパに派遣した19名の薩摩藩士たちの像。その中には朝ドラや大河ドラマでもおなじみの五代友厚、初代文部大臣の森有礼らがいる。
きっと駅前にあるのは西郷どんじゃなかろうかと思っていたが、そうではなかった。まだ海外渡航などほとんど現実的ではない時代に海を渡った若者たち。きっと当時の薩摩の人々は、彼らに未来を託して送り出したのだろう。そんな心意気を、いまでも大切に受け継いでいるということか。
さて、こうしてとにかく鹿児島のターミナル・鹿児島中央駅にやってきたのである。
実は政令指定都市ではない県庁所在地でいちばん人口が多い鹿児島
鹿児島市は、いうまでもなく鹿児島県の県庁所在地だ。そして島津氏が治めた薩摩藩の城下町。人口約59万人は、九州では福岡・北九州・熊本に次ぐ第4位だ。それどころか、実は政令指定都市ではない県庁所在地でいちばん人口が多い。
政令指定都市以外で鹿児島市よりも人口が多い街は、千葉県船橋市と埼玉県川口市のふたつだけ。東京から線路が途切れず続いている街ではいちばんの南の果てのターミナルは、全国屈指の大都市の玄関口なのだ。
さっそく鹿児島中央駅の周りを歩いてみよう。約60万の大都市だから、駅前だけでことが済むとは思っていない。広大な駅前広場の前には南北に大通りが走り、さらに東に向けて放射状に3本の大通り。このあたり、いかにも鹿児島中央駅が街の中心、文字通りの“中央”であろうことを教えてくれる。
駅正面の道を歩いて行くとほどなく川のほとりに出た
どの道を歩いてもいいのだろうが、まずは駅の正面からまっすぐ東に伸びる道をゆく。街路樹が植えられていて歩道も幅広で、実によく整備された道だ。なぜか(きっと姉妹都市かなにかの縁だろう)「ナポリ通り」と名付けられている。周囲はひたすら市街地が広がっていて、ほどなく甲突川のほとりに出る。