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タイトル戦の前夜祭でプロ編入試験について聞かれ…

――女流棋士の参加できる棋戦が増える=棋士側が馴れてくる。たしかにそうですね。狩山四段に取材したときも「公式戦で対戦もしていますので特別緊張することはありません」と答えていました。中井さんご自身は、長時間で戦うことのしんどさはどうでしたか。足を崩しにくいとか。

中井 そういうことはあまり気になりませんでした。ただ、女性のほうが好調不調に波があるなとは思います。

 里見さんの編入試験ですが、全3局の内容を見て、いつもの里見さんらしくないなと感じました。それがプレッシャーなのか、バイオリズムのようなものなのかはわかりませんが、それまでの彼女の将棋とは違う気がしました。

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――瀬川晶司アマ(現六段)との試験対局についてお聞きしてもいいですか。中井さんが試験官になったのは米長邦雄会長の決定で、事後承諾だったんですよね。

中井 タイトル戦の前夜祭に出席したときに、米長先生に私と久保さん(利明九段)が別々に呼ばれて、「こういうこと(プロ編入試験)を考えているんだけど、その制度ができたらゆくゆくは女流棋士も好成績を収めれば棋士の道が開ける、女性にとってもいい制度じゃない? どう思う?」と聞かれました。そのときは瀬川さんのような(※筆者注:そのとき瀬川はプロ公式戦17勝6敗だった)すごい成績を女流棋士があげられるわけがないと思っていて、何を夢みたいな話をしているんだろうとは正直思ったんですが(笑)。

2005年、プロ入り直後の瀬川晶司五段 ©文藝春秋

 それは米長先生には言えませんので、「女流棋士にとってもいい制度ですね」と言ってその場は終わったんです。そうしたら後日、試験官のメンバーに私の名前が入っていてびっくりという(笑)。自分から「やります」とは言っていないし、そもそも米長先生から試験官の話は一切ありませんでした。

 私は米長先生の考えを直接聞いたわけではありませんが、試験官のメンバーを見ると、瀬川さんなら私には勝てるだろうと考えていたのかなあと(笑)。他にはA級在籍の久保さんも入っていましたし(※筆者注:銀河戦で瀬川が久保に勝ったことが編入試験へのきっかけとなった)、全部ガチで強い棋士ばかり当てたら厳しすぎると。

 でも今にして思うと、女流棋士の受験については、あの時の米長先生の話が実現してびっくりしています。

――実際の試験対局はどうでしたか?