中井 ええ、第3局も、普段なら大駒を切って攻めていたと思いますね。
里見さんには、また規定の成績をおさめることができたら、再挑戦してほしいとは思います。ただ、制度自体がどうかと思っています。アマチュアの方が受けるのはいいですが、女流棋士は参加できる棋戦が増えているじゃないですか。仮にプロ編入試験に受かってフリークラスの四段になったとしても、新たに参加できるのは王将戦、叡王戦など数棋戦で、現状とあまり違いがないんですよ。順位戦に参戦するためにはフリークラスからまた昇級しなければいけない。
プロ編入試験とは関係なく、女性が三段リーグを抜けて四段に上がったらどうするか、という問題も真剣に考えておく必要があると思います。
編入試験に合格すると、両方の棋戦に出場することができます(※筆者注:2019年8月に「女流棋士がプロ棋士編入試験に合格した場合、女流棋戦、及びプロ棋士公式棋戦の両方に出場することが出来る」とする日本将棋連盟の規定が作られる)。ですが、もし女流順位戦と順位戦の両方に参加することになると、あわせて年間19局(女流順位戦が9局、順位戦が10局)にもなります。対局のスケジュールがとても厳しくなりますよね。
結果よりもその成績をおさめるまでの功績はとても大きい
――中井さんご自身は、女流順位戦の白玲戦ではA級唯一の50代ですが、どうですか。A級には40代すらいないんですよね。
中井 なんで私がA級にいるんだろうという気持ちです(笑)。未だによくわからない(笑)。
ただまあ、年をとっても頑張れるんだよ、というところを後輩に見せることも大事かなと。頑張ってA級にしがみついていきたいと思いますし、そのために研究したりVSしているのは楽しいです。後輩たちが強くなって、私を踏み台にして追い越してほしいと思います(笑)。
――里見さんにエールをお願いします。
中井 結果がどうこうよりも、その成績をおさめるまで女流棋士をひっぱってきた功績はとても大きいです。そこまでの努力も、ものすごいものだったと思います。西山さんというライバルができて、彼女も一人ではないと、高みを目指す方は自分だけではないと、勇気づけられたのではないかと思います。またチャンスがあれば、挑戦してほしい。それだけの実力があると思います。
将棋はとてもメンタルなゲーム
先日、小山怜央アマのプロ編入試験が行われた。小山さんは徳田、岡部に連勝し、狩山には敗れたものの、第4局では見事な内容で試験に合格した。
「将棋はとてもメンタルなゲーム」である。第4局できめこまかな新手を出した小山は、穴熊が崩れるのもいとわず、横山四段に勝った。プレッシャーをまったく感じさせない内容だった。
だが小山と里見を比較するのは意味がない。小山が強かったからで、決して里見が実力で劣っていたことではないことはわかっていただきたい。
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