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女流棋界のレジェンドが送る、里見香奈へのエール「堂々としたねじり合いで男性棋士に勝っている」

女流棋界のレジェンドが送る、里見香奈へのエール「堂々としたねじり合いで男性棋士に勝っている」

さらなる高みを目指して、里見香奈の2022年 #3

2023/02/22
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 女流棋士になってから中1で奨励会に入会しました(1983年)。最終的には奨励会2級で年齢制限がきて退会しました(※筆者注:21歳までに初段という年齢制限がある)。

真剣に考えることの積み重ねは将来にわたる財産

――中井さんが最初にプロ公式戦で棋士に勝ったのは1993年で、もう30年前になるんですね。

中井 研究会ではたまに棋士に勝つこともありましたが、研究会と公式戦ではまったく違うことはわかっていました。実力差があることは実感していて、自分の調子がよく、相手の調子が悪かったから勝っただけだと思っていました。

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 昔は参加できる棋戦が少なく、最初が新人王戦で、その後1990年頃から王座戦、NHK杯、竜王戦と増えていきました。やはり対局の機会が増えることが女流棋士のレベルアップにつながっているかなと。

 女流棋戦のほとんどは持ち時間が2時間以下ですが、王座戦や竜王戦などは5時間と長いですよね。やはり実戦で、真剣勝負で、長い時間考えるという蓄積が棋力向上につながります。強い相手に対して長い持ち時間をつかって、真剣に考えることの積み重ねは将来にわたる財産になります。

 私はたまたま勝っただけですが、今の女流棋士は堂々としたねじり合いで勝ったりしていますね。普通に勝っている、というと語弊があるかもしれませんが、実力で勝ったと言える内容です。女流棋士のレベルがすごく上がりました。昔の実力差を知っている一人として、今の状況は信じられないですね。

2018年には、藤井聡太七段(当時)と公式戦で対局した ©文藝春秋

棋士側のプレッシャーは少なくなった

――里見さんのプロ編入試験受験について、感想をきかせてください。

中井 受験資格取得自体のハードルが高いので、そんな高い成績を収める女性が出てくるとは思わず、とても驚きました。

 ただ、高い成績を収めていたとしても試験は試験として別で、その時の勢いや調子が関係してくると思います。里見さんの調子が上がっていないときに、絶好調の徳田さんにあたったことは大きかったのかなと。

「女性代表」としてのプレッシャーも重かったかもしれません。

 逆に、棋士側のプレッシャーは少なくなったと思います。昔は棋士が女流棋士と対戦する機会がほとんどなかったうえに、実際に棋力差があり、「格下に負けたらいけない」というプレッシャーが大きかったでしょう。しかし、今は公式戦で女流棋士と対戦する機会も多くなりましたし、女流棋士が強くなったということは認知されています。里見さんや西山さんと三段リーグで戦った経験のある棋士もたくさんいます。