1ページ目から読む
4/5ページ目

中井 昔の研究会では、私は奨励会員としてより、女流棋士として瀬川さんと指していた時期のほうが長く、ずっとこちらが教わる立場でした。ところが試験対局では、私がプロ側で上座に座り、王将をもってと……。だから対局が始まった時、すごく違和感があったんですよ。

 私が男性の棋士と指すときは、いつも私ばかり写真を撮られていて、応援してもらう立場だったのが、試験対局では写真は瀬川さんばかり。私は背中からフラッシュを浴びて、なんだかヒールっぽい役回りで(笑)。

 だけど、女流棋士の代表とまで言いませんが、まあ女性代表という位置づけで指していたので、負けたくないという気持ちはありました。相手のことをまったく知らないという勝負ではなく、戦型も予想通り(後手の瀬川の横歩取り)。そういう意味で、盤上ではやりにくさはなかったです。

ADVERTISEMENT

公式戦で男性と戦っていると、女流を背負っているという気持ちも

――私はあのルール(持ち時間3時間)なら中井さんのほうが経験があるし、中井さんが勝つんじゃないかと思っていました。実際、必勝形でしたね。

中井 そうそうそうそう(笑)。終盤は手応えがあったんですけど、終盤力がなかったので(笑)。

 だけど、もしあのとき私が瀬川さんに勝っていたら、棋士人生は変わっていたかなと思うこともありますね。NHK杯の康光戦とかもそうですが。

※追記 先日瀬川にあのときのことをうかがった。「中井戦は、対局中はそれほど悪いとは思っていなかったのですが、後から棋譜を振り返ると必敗でしたね。負けていたらプロ棋士にはなれなかったと思います」。

――あれも必勝形でしたね。テレビで見ていました。棋聖3連覇中の康光さんに勝ちそうだったので、びっくりしたんですよ。

中井 そうそう(笑)。もし勝っていたら、ちょっと違ったのかなあと思いますね。それは私のことだけではなくて、女流棋士全体のことにつながるという気持ちもありました。そういう気持ちは、今回の里見さんもそうだったかと思います。西山さんもですが、公式戦で男性と戦っていると、女流を背負っているという気持ちもあるのかなと。

 里見さんの編入試験第2局は、残念でした。里見さんは相手の攻めに対して丁寧に面倒を見るタイプだから、そういう棋風が出てしまったところもあるのかなと思いました。3局目も里見さんらしさが出なかったなと思います。

――普段の力が出せていたら結果は違っていたと思いますか?