2023年1月21日、貨物線乗車ツアーが開催された。両国駅を出発して大宮駅に至り、両国駅に戻るルート。

 旅客列車なら、総武線各駅停車で秋葉原へ行き、京浜東北線で大宮へ、という単純なルートが正解だけど、目的は「貨物線乗車」だからぐるりと迂回する。みどころは新金貨物線、武蔵野線馬橋支線、武蔵野線西浦和支線、武蔵野線大宮支線、東北本線貨物支線、田端貨物線だ。このうち新金貨物線と馬橋支線、田端貨物線は定期旅客列車がない。団体列車を仕立ててJR東日本に走らせてもらわないと乗れない。

両国駅で出発を待つ「新金線旅客化祈念号」定期運用から引退した185系電車を使用

小岩駅と金町駅を結ぶ貨物線

 このような貨物線ツアーは乗り鉄を中心に人気がある。ふだん旅客列車が通らない貨物線に乗るという珍しい体験は魅力的。貨物線といえども、線路の所有者はJR東日本だ。車庫で眠っている車両を使って、貨物列車が走らない時間帯に満員の列車を走らせればビジネスとして成り立つ。

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 そこで旅行会社が年に数回ほど募集型団体旅行を企画する。私も何度か乗っていて、いつも満席の大人気となっている。鉄道ファンだけではなく、家族連れや女性グループも参加している。手軽な電車旅として親しまれているかもしれない。

改札を通らずに3番ホームへ。男性が多いが女性グループや親子の姿も

 今回の旅は旅行会社のツアーとは違って、市民団体「新金線いいね!区民の会」が企画し、旅行会社が手配を行なった。「新金線いいね!区民の会」は、新金線の旅客化を願う人々が結集し、住民側の立場で応援するボランティア団体だ。活動の目標は新金線の旅客化であり、その一環として、乗車ツアーを実施して広く理解を深めたい。だから新金線経由は必須条件だ。

 新金線は、東京都葛飾区の新小岩駅と金町駅を結ぶ貨物専用線だ。総武本線の貨物支線で、実際には新小岩駅に隣接する新小岩操車場で分岐する。だから「新小岩」と「金町」の頭文字を取って「新金線」と呼ばれる。

葛飾区(黒枠)を縦に貫く新金線(赤線)のルート(国土地理院地図を加工)

なぜか遠回りの貨物線ツアー

 そんな「新金線いいね!区民の会」が、新金線旅客化構想を知ってもらいたい、自分たちも乗ってみたい、という思いで計画したのが「新金線旅客化祈念号」だ。

いよいよ新金貨物線。沿線は住宅や学校で埋め尽くされている
 

 計画を広めたいという思いがあるから、参加資格に制限はない。沿線に住む人に限らず、新金線や貨物線、貨物線旅客化に関心がある人をSNSで呼びかけた。参加者は約330名。1人で2座席ぶん、という販売枠もあったので、これでほぼ満席である。

車掌帽を用意してノリノリで楽しむ2人は「東京すり鉄学会」のみなさん。すり鉢状の窪地の景色が好きな「東京スリバチ学会」の鉄道分科会だそうで

 使用車両は国鉄型の185系電車だ。伊豆方面の「踊り子号」として活躍し、2021年3月に定期運行を終了した。鉄道ファンに人気の車両で、現在は臨時列車や団体旅行に限って運行されており、とても貴重な乗車体験である。