千葉貨物ターミナルから都心を通過する貨物列車は、総武線や新金線を通らずに、蘇我から京葉線に入り、西船橋から武蔵野線に入る。貨物時刻表によると、現在、新金線の貨物列車は平日に下り4本、上り5本。休日に下り3本、上り3本。このなかに越中島貨物駅(東京レールセンター)から全国に交換用レールを輸送する列車が1往復ある。時刻表に載らない「機関車の回送運行」もあるようだ。しかし、貨物列車は運ぶ荷物がない日は走らない。新金線は都会の中の閑散ローカル線となった。
新金線の貨物列車が減ったなら、旅客列車を走らせてもらいたい。1983年に葛飾区議会で「新金貨物線の旅客化に関する意見書」が採択された。この時の試算は全線複線高架化で国鉄と同規格の電車を走らせる。事業費は約930億円。国鉄に出せる金額ではなく、請願路線として葛飾区が全額出せるはずもない。1995年はLRT規格で調査し、事業費は約636億円。
今後もウォーキング、沿線クリーンアップなどを開催
フルスペックで進めようとした葛飾区案に対し、住民有志が試算した「単線、平面のまま改良」案は事業費58億円だった。必要な機能を低コストで実現できるはず。住民有志は広報活動や新金線を走る団体列車を企画するなど、新金線誘致活動を続けてきた。
2015年にボランティアサークルとして「新金線いいね!区民の会」が結成された。行政へ新金線旅客化を「要望」する会ではなく、住民の願いや提案を行政に伝え、新金線旅客化計画を「応援」するという趣旨だ。ノンポリ(政治活動をしない)、ノービジネス(営業活動をしない)、ノーギャラ(報酬を受け取らない)を徹底し、新金線を知ってもらう活動を実施している。具体的には毎月第3土曜日に沿線ウォーキング、沿線クリーンアップイベントを開催する。新金線試乗ツアーもそのひとつ。
葛飾区長や葛飾区の担当部署とも情報交換している。「新金線いいね!区民の会」のメンバーは本業の得意分野を生かした調査研究を実施しており、経営について具体的な数字を提示している。
葛飾区もこうした熱意を受けて2017年度から調査費を予算に計上し、葛飾区公式サイトで公開する。目標は国土交通省の交通政策審議会がまとめる「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」に採択されることだ。東京圏の新線計画はここでお墨付きをもらうことが重要だ。江東区を南北縦断する「東京メトロ有楽町線延伸」や「多摩都市モノレール延伸」の事業計画も交通政策審議会の採択から本格的に動き出した。次は葛飾区の番だね、というわけだ。
「新金線いいね!区民の会」は今後もウォーキング、沿線クリーンアップなど定期的な活動を続けていく。次の試乗会も秋頃を目指して検討中とのこと。宇都宮まで走らせて、この夏に開業する宇都宮ライトレールに試乗したいという。LRTの先輩に会いに行く旅。それは良いアイデアだなあ。楽しみだ。
写真=杉山淳一