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もうすぐ廃線「留萌本線」“最後の日々”〈1日平均乗客数が2人以下の途中駅、潮風で朽ちた外壁…〉

2023/02/25

genre : ライフ, 歴史, , 社会

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 北秩父別は、そんな国鉄時代の仮乗降場の趣きを今も色濃く残す駅である。朽ち果てそうな木造の待合室はJR北海道にも地元の秩父別町にも財産登録がなく、開業当時に近隣住民が建てたものらしいとのことで、鄙びた雰囲気に拍車をかけていた。

北秩父別駅の時刻表。留萌方面の下り列車は夕方の2本だけ

 ただ、線内屈指の小駅であるせいか、停車するのは下りが夕方の2本、上りは朝3本と夕方1本の計4本だけで、他の列車は普通列車なのに通過してしまう。列車での訪問が非常に難しいという意味でも、秘境駅の一つに数えられる。

待合室が右に傾いている
室内に駅ノートが取り残されているのが見える
封鎖前の北秩父別駅待合室内。狭くとも冬季は重要な空間

 この木造待合室、中には駅訪問者が書き残すノートが置かれたりしていて、知る人ぞ知る留萌本線の名物になっていたのだが、令和4(2022)年6月、留萌側へ大きく傾いていて、倒壊の危険があるとして封鎖され、立ち入れなくなった。

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 結局、同年10月に解体され、現在は3年後の全線廃止まで使用するための新しい簡素な待合室がホーム下に設けられている。

北秩父別駅に到着した深川行きディーゼルカー

1日の平均乗客数が0~2人の途中駅ばかり

 もうすぐ3年限定の終着駅となる石狩沼田が最初の停車駅。乗降客はなく、ドアが静かに開閉するだけ。ここから、まもなく線路が剝がされる廃止予定区間となる。

 6時ちょうど、北秩父別と並ぶ線内の「朝礼台ホーム」駅として知られる真布(まっぷ)を通過。ここも日中の普通列車の一部が通過してしまう元・仮乗降場だが、これでも、函館本線に所属する深川を除く線内の駅としては、1日あたりの平均乗車人員が石狩沼田(58.6人)、留萌(35.2人)、秩父別(27.0人)に次いで4番目に多い、というJR北海道の調査結果がある(平成29年~令和3年の5年平均の駅別乗車人員)。

真布駅に接近

 もっとも、「多い」といっても1日あたり2.2人(!)であり、他の駅は軒並み0~1人台であるから、誤差の範囲みたいなものではある。真布から留萌の1つ手前の大和田まで、途中の6駅がいずれも0~2人ばかりなのだ。

 大量輸送が本来の役割である鉄道としての特性を全く発揮できていないのは明らかで、地元客が3人しか乗っていないこの車内の状況も納得せざるを得ない。