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峠を越えて穏やかな農村地帯を走る

恵比島駅。左側が本来の貨車改造駅舎、右は『すずらん』撮影時に建てられた「明日萌」駅舎のオープンセット
車内から見た恵比島駅。「あしもい」の駅名標がホームに立っている

 次に通過する恵比島は、平成11(1999)年にNHKの連続テレビ小説『すずらん』の舞台として、一躍脚光を浴びた時期がある。作品では「明日萌(あしもい)」という架空の駅だったが、昭和初期という時代設定に合わせた駅舎が撮影セットとして建てられ、放映後もそのまま観光施設として使用されている。

 一時は「すずらん」の名を冠した観光客向けのSL列車が走ったこともあるが、すでに放映から20年以上が過ぎており、当時の番組を知る人も少なくなっている。

山間部を走る(恵比島~峠下)

 恵比島の先で上り坂になり、ディーゼルカーのエンジン音がひときわ力強くなる。トンネルを2つ抜けて人里離れた山間部を走ると、6時10分、峠下駅が見えてきた。線内で唯一、反対列車との行違いができる駅で、留萌から深川へ向かう1番列車も前方から姿を現し、ほぼ同時に峠下駅に到着した。この駅で、鉄道ファンらしい若い男性乗客1人が、初めてこの列車から降りていった。

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向かいからやって来た反対列車とほぼ同時に峠下に到着
留萌発深川行き1番列車(峠下)

 山岳地帯を過ぎた列車は、稲穂が揺れる水田地帯を走る。今度の収穫が終わって雪が降れば、もうこの景色を列車から眺めることはない。

 幌糠、藤山と1日の平均乗客数が1人未満の小駅を続けて通過する。平成6(1994)年に初乗車したときは峠下~幌糠間に東幌糠という駅もあったのだが、利用客が少なすぎて平成18(2006)年に廃駅となっている。

この光景はもう見られない(幌糠~藤山)

 留萌の1つ手前の大和田で、鉄道ファン2人が下車。結局、深川からここまで途中駅からの乗客は1人もおらず、地元客3人と鉄道ファン10人が全区間を乗り通すことになった。

大和田駅に停車中

 大和田を出た列車は留萌川を渡り、深川からの自動車専用道路の終着点を横目に、下り坂を海へ向かって快走する。