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もうすぐ廃線「留萌本線」“最後の日々”〈1日平均乗客数が2人以下の途中駅、潮風で朽ちた外壁…〉

2023/02/25

genre : ライフ, 歴史, , 社会

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 やがて前方に、跨線橋でホームを結ぶ広い構内の留萌駅が現れ、6時36分、その1番ホームに定刻通り到着した。駅員が配置されている有人駅ではあるが、切符売り場などの営業時間は8時45分から。そのため、この1番列車は留萌下車時も運転士が切符の確認・回収や運賃精算を1人で担っていて、普通運賃で乗車していた私は切符を運転士に渡した後、入場券も帰りの切符も持たない状態でしばらく1番ホームをうろうろしていた。

終点・留萌に到着
この看板に歓迎される観光客はどのくらいいるのだろうか

 1番ホームからさらに先へ延びた線路は、少し先で断ち切られていた。ここから先、日本海に沿って増毛まで続いていた16.7kmが廃止されてから、約6年が経過している。

 昭和62(1987)年までは、ここから日本海に沿って北上する羽幌線という長大な支線が分岐していた。留萌本線は函館本線の支線ではなくれっきとした「本線」であり、留萌は増毛、深川、羽幌の3方向から列車が集まる一大ターミナルだったのだ。

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ホームの先で線路は途切れている(留萌)

 それが今では、深川へのディーゼルカーが1日7回発着するだけ。使用されなくなった2番ホームへの跨線橋は、階段の入口がビニールシートで封鎖されている。広々とした駅構内や改札口前の待合エリア、巨大な駅舎などが、いずれも往年の賑わいを偲ばせ、また寂しさを感じさせる。

列車が発車しない2番線ホームへの跨線橋は通行できなくなっている(留萌)
往年の賑わいは全く感じられない大型駅舎(留萌)

潮風にさらされていた廃駅舎

 平成28(2016)年12月までは、留萌本線の列車はここから日本海沿岸を南下していた。私が平成6(1994)年の冬に乗車したとき、1両編成のディーゼルカーが、雪が舞って波が高い海に沿って走っていったのを覚えている。

平成28(2016)年に廃止された礼受駅舎

 その途中にあった礼受(れうけ)という駅舎が、国道231号線沿いに今も残っているのを見つけた。貨車改造の旧駅舎は、まるで民家の軒先に置かれた私有のコンテナのような佇まいである。

 海側に面した外壁は潮風にさらされて腐食が進んでいるが、「JR礼受駅」の文字は今でもはっきりと読み取れる。ホーム跡から増毛方面を見ると、放置されたままの線路が草叢の中へと消えている。

礼受駅ホーム跡から留萌方面を望む。左の下方に日本海が見える
礼受駅跡から増毛方面には線路が放置されている