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もうすぐ廃線「留萌本線」“最後の日々”〈1日平均乗客数が2人以下の途中駅、潮風で朽ちた外壁…〉

2023/02/25

genre : ライフ, 歴史, , 社会

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観光施設に生まれ変わった終着駅

現役時代の増毛駅。1両のディーゼルカーには長いホームだった(平成6年撮影)
ほぼ同じ位置から撮影。線路もきれいに残されている

 利用客の減少が理由で廃止されたかつての終着駅・増毛は、現役当時の状態がほぼそのまま保存されていた。しかも、吹雪の中で何もすることがなく、私1人が列車の出発を待っていた28年前とは比較にならないほど、明るいイメージで一新されていた。

現役時代の増毛駅舎(右)と出発を待つ深川行き列車(平成6年撮影)
ほぼ同じ位置から撮影。駅舎は観光施設として整備された

 当時は無人駅で誰もいなかった駅舎内は、建物自体が拡張されて屋内が休憩スペースとなり、売店を利用して食事もできるようになっている。増毛まで鉄道があった時代の資料や廃止当時のヘッドマークなども展示されている点は、留萌本線の現役当時を知る鉄道ファンの目を引くと思われる。

 もっとも、来訪する旅行者のほとんどは、レトロな雰囲気を残す周辺の街並みの一部として修復された駅舎を見ているようで、だからこそ家族連れなど多くの観光客が立ち寄りやすいのだろう。

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旧・増毛駅舎内
留萌~増毛間廃止当時の列車用ヘッドマーク(増毛)

増毛駅といえば…

 令和4(2022)年秋からは、この増毛駅を舞台にしたアートネイチャーのテレビCMが全国で放映され始めた。「増毛」の文字が「毛が増える」と読めて縁起の良い駅名だ、ということで、現役時代は無人駅だった増毛駅の入場券が留萌駅で販売されていたこともあるが、あくまでも鉄道ファン向けの商売だった感は否めない。CMを見て、出演している城島茂(TOKIO)のファンがやって来れば、さらに来訪者で賑わうかもしれない。

増毛は現役時代から「髪が増える」縁起駅名として知られていた

 鉄道の現役時代は利用者の姿がまばらだったのに、廃線後に駅の跡を訪れる旅行者が増えるというのは、鉄道駅として果たすべき役割が倒錯しているように思える。ただ、朽ちるに任せた礼受駅などと比べれば幸運な余生として、もって瞑すべしとも言える。まもなく消える石狩沼田~留萌間、そして3年後までの余命が宣告されている深川側の残存区間は、廃線後にどんな姿で後世に伝えられていくのだろうか。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。

「日本列島改造論」と鉄道 (交通新聞社新書161)

「日本列島改造論」と鉄道 (交通新聞社新書161)

小牟田 哲彦

交通新聞社

2022年6月15日 発売

もうすぐ廃線「留萌本線」“最後の日々”〈1日平均乗客数が2人以下の途中駅、潮風で朽ちた外壁…〉

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