なぜなら、猿は絶対に食物を分け合いません。チンパンジー、ゴリラ、オランウータンは、時々食べ物を分けますが、食べ物があるところでしか分配しないし、しかもケチ。まずい方か小さいほうを仲間にあげます(笑)。
なぜ猿は分配をしないのか?
堤 お裾分けの精神はないんですね。その辺は、猿が一番はっきりしているんですか?
山極 猿は自分中心で、おのおのが食べ物は自分で確保し、分配しません。強い方が餌場を独占するんですよ。ただし、先行保有者優先の原則があって、一度食物を手に取ってしまえば、それは奪われません。
餌場を優先的に取るのは強い猿で、小さい弱い猿は他に行って探さないといけないわけです。ただし、これはさほど不公平な話でもなく、木の上はむしろ小さい猿の方が有利で、枝先の美味しい実や葉っぱを採れる。地上には猿が食べられる餌はあまりないので、同じ食物資源で鉢合わせをしないよう、弱いほうが分散して食べましょうというルールです。
堤 ちゃんと住み分けてるんですね。弱いチンパンジーやゴリラはどうしてるんですか?
山極 大きなチンパンジーやゴリラが、デカいフルーツを食べていたり、今しがたハンティングしてきた動物の肉を食べたりしていると、メスや子供たちがやってきて、おねだりするんです。弱いほうが「頂戴」していく。
オスだって、本当は自分が独占して食べたいんですよ。でも、メスは要求がすごくしつこくて付きまとったりするから、根負けして渋々分けてやるんです。
堤 心の広い良く出来たオス、という美談かと思いきや……。
山極 寛容だからじゃない(笑)。それに比べたら、人間はめちゃくちゃ気前がいいんですよ。自分の取り分を少なくしても、「食べて、食べて」って大盤振る舞いしたりするじゃないですか。
しかも、仲間のために食物を運ぶ。例えば、キノコ狩りとか山菜取りとか、その場で食べられるイチゴとか柿とか、採ったらその場で食べるか、自分のために持ち帰ればいいのに、わざわざ必要量以上のものを持ち帰って、みんなに分けて一緒に食べるでしょう。
『孤独のグルメ』に共感する現代人
その行動の起源は、700万年前にチンパンジーの共通祖先から離れた直後に、人が二足歩行をはじめたことにあるんです。立って歩いて両手が自由になると、口にくわえるのではなく、手で食物を運んだ。