だが、30代、女性という共通点くらいならまだしも、名前まで同じ漢字の「典子」を引っ張ってきた。渡辺はデリカシーのない克行の発想が許せなかった。広島の主流派経済人を父に持ち、親の七光りで宏池会の重鎮にも一目置かれる彼女からすれば、傍流の政治家に縋りつく必要もない。もともと凄まじい河井アレルギーのおかげで逃げる票もあり、河井派として活動することに限界を感じていた。
結局、渡辺典子は別の典子にダブルスコアに近い差をつけ、3選を決めた。だが、同時にある決意を固めた。参院選を最後に克行から距離を置こう──。そう考えた矢先に事件に巻き込まれた。
買収事件が発覚…案里氏からの着信が
渡辺は12月23日にあった案里からの着信を1度は無視した。だが、すぐに再びかかってきた。
「こういう状況なので、お話をしないほうがよくないですか?」。渡辺はそう断った。
すると案里は平然とした声で「だいじょうぶ~。確認したいことがあるだけだから~」と答えた。詳しい話はこの後、秘書から電話させるという。
数分後、案里の秘書である前田智代栄から電話が来た。ウグイス嬢に聞き取りしたヤメ検弁護士と同様、どんな経緯で夫がウグイス嬢を連れてきたのかを根掘り葉掘り聞き出そうとしてきたのだ。
それからも渡辺のもとには案里や智代栄からの電話が続いた。ふたりは渡辺の夫にも電話をしている。そして渡辺が「すりあわせ」に応じなくなると、こんどは渡辺の後援会幹部に手を回してでも対話を迫ってきた。渡辺はヤメ検弁護士の落合洋司を雇う一方、「週刊文春」の記者と連絡を取りはじめた。
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