「魔法のiらんど」「イルカの夢でさようなら」「愛の妖精ぷりんてぃん」「バスト占いのうた」「マイケルクエスト」「菅井君と家族石」「Nice boat.」「あいつこそがテニスの王子様」……。
一体どれだけの人がこれらのフレーズにピンとくるだろうか。そんな言葉が飛び交う番組が2月20日と27日の2週にわたって放送された『マヂキタ大草原』(テレビ東京)だ。平成のネットの世界にどっぷり浸かったマヂカルラブリー・野田クリスタルと真空ジェシカ・川北茂澄がMCを務め、当時を知らない森香澄アナウンサーを相手にネット文化を振り返っていく。
川北は2021年の『M-1グランプリ』ファイナリスト発表会見でもつけていた、いわゆる「一生消えないイルカ」(Microsoft Officeの画面上に表示されたヘルプのキャラクター)を頭に装着し、「『なにか私に聞きたいことありますか』みたいなのがずーっと消えないから、そこにみんな『お前を消す方法』って入れてた」とネットあるあるを披露。キョトンとしている森アナに構わず「ggrks」「逝ってよし」「マターリいきますか」「sageてsageて」「ROM専」などといったネット用語を使った会話を続けるのだ。思えば、川北の突拍子もないボケは、ネットのノリの影響も色濃いのかもしれない。もちろんそれは野田も同様。2ちゃんねるの「インディーズ芸人」板で自演したり、ニコニコ動画のコメントも何度も書き込んでいたそう。大ヒットを記録した自作ゲーム「野田ゲー」は間違いなくそんな経験の延長線上にできたものだろう。「ネットとエロは同じ言葉だと思っていい」「(コメントは)演出なんだよね。あの瞬間はやっぱ、このコメントが心のつまみになって感情を高めてくれるわけよ」といった実感がこもった言葉は説得力抜群だ。
前編には、AA職人のインコマンやFlash職人でいまや『秘密結社 鷹の爪』制作でも有名なFROGMANらネットのレジェンドたちも登場し、2人は「これがテレビか!」などと興奮。後編では「ゲーム実況の祖」ゆとり組までもが初の顔出し出演。彼らに「野田ゲーを実況させてください」と言われ野田は「泣いちゃうって。最終地点なんじゃないの、俺の?」と喜びを噛みしめるのだ。
2人が「ネット民」としてリアルに青春をすごしていた熱量があるから、見ているこちらの記憶の扉も自然に開いてくるし、たとえわからない分野でも面白い。「時間の無駄だと当時は思っていた色んな出来事が今、ひとつのものに向かっていっている感じがする」と感慨深げに語る野田。「ボカロが陽と陰をつなぎあわせた」とネット文化の分岐点を指摘していたが、野田こそが真の意味でネット文化とテレビのお笑い文化をつなぎあわせている。
INFORMATION
『マヂキタ大草原』
テレビ東京系 スペシャル番組
https://video.tv-tokyo.co.jp/majikita/index.html