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「小6で180cm、あだ名はビッグフットでした」荒木絵里香が語る、私のバレー人生を変えた“”恩師と母”

「小6で180cm、あだ名はビッグフットでした」荒木絵里香が語る、私のバレー人生を変えた“”恩師と母”

下北沢成徳高校女子バレー部OG・荒木絵里香さん特別インタビュー

2023/03/31
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 日本女子バレー界のレジェンド選手を多く輩出してきた名門・下北沢成徳高校。同校でコーチ時代から48年間、生徒たちを指導した小川良樹監督が今年度をもって監督業から勇退する。「長時間練習」「体罰」といった学校スポーツの悪しき伝統からどこよりも早く脱し、小手先の技術でない真っ向勝負のオープンバレーで高校三冠を達成した。

 今回、「週刊文春」の特集企画で、小川良樹監督をはじめ、下北沢成徳OGの荒木絵里香、大山加奈、木村沙織、そして今春に下北沢成徳を旅立った“最後の教え子”が特別インタビューに登場。教え子たちが見た、唯一無二の恩師の姿とは――。誌面で掲載しきれなかったエピソードを紹介します。(全4回の1回目/#2、#3、#4へ続く)

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 2021年の現役引退から、今年で2年目を迎えた。長い髪を後ろで一つにまとめた戦闘スタイルが印象的だったが、引退後にバッサリ切ってしまった。ようやくこのボブヘアが板についてきたようだ。

解説者、大学院生、チームスタッフ、そして一児の母

 現役時代は「チーム最年長」や「ブロックの名手」、さらには「五輪4大会出場のレジェンド」。知らぬところで、荒木絵里香につけられた肩書はいくつもあった。現役を引退した今は、OGとして多くの試合で解説を務め、戦術やポジションの役割を分かりやすく伝える。「人気解説者」としての顔も広く知られてきた。

 私生活では、2014年に出産した長女の和香ちゃんが小学校に入学。一児の母でありながら、自身も昨年4月から早稲田大学の大学院スポーツ科学研究科修士課程に入学し、今年1月にはブロックをテーマとした修士論文を提出。「毎日ボロボロ」と笑いながらも発表までの課程をクリアした。さらには、古巣のトヨタ車体クインシーズのチームコーディネーターも務め、自チームの試合にスタッフとして参加するだけでなく、スカウトを兼ねて全国の学生大会にも足を運んでいる。

 現役選手として輝かしい成績を残しながら、終えてからのセカンドキャリアがここまで充実している選手もそうそういないだろう。しかし、当の本人は「引退した今の自分にはわからないことばかりで、何者でもない」と謙遜する。そして高校時代のかつての自分と、今の学生選手たちをこう比較した。

「私はただデカいだけでとにかくヘタクソだったし、どんくさかった。でも今の子って、大きくても動ける子や、器用な子も多い。すごいなぁ、って感心するばかりです。たまにあの頃の自分みたいに、大きいだけでまだまだ技術が伴わない選手がいると、どうしても贔屓目に見ちゃいますね(笑)」

 

小学生で180cm 同級生に「ビッグフット」と呼ばれて

 小学生の頃から、ずば抜けて大きかった。

 たいていの場合、小学生の頃から身長が高ければ女子ならばほぼ100%バスケットボールかバレーボールに、と勧誘され、高さを利とすることが多い。だが、体育教諭でもあった荒木の母・和子さんは「早い段階から1つだけの競技に特化すべきではない」と陸上競技や競泳などさまざまなスポーツを経験させたという。本格的にバレーボールを始めたのは小学5年生になってからだった。