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「負けた後、小川先生から『負けたことは悔しいけれど、でもバレーボールは終わりじゃない。負けた悔しさが将来につながるから』と言われました。それでも切り替えるのに2週間ぐらいかかったんですけど、でもその姿を1、2年生に見せていたら、自分どころか次のチームにも何も残せない。もう1回、1、2年生のために頑張ろう、って3年生同士で話をして。正直、試合のことは何も覚えていないぐらい、まだ真っ白なんですけど、後輩のため、自分のために。何もできない状態から始まった成徳の3年間でたくさんのことを教わってきたので、もっと自分のレベルを上げて、オリンピックに出て活躍するような選手になりたいです」

 少しずつ、でも着実に。苦しさと悔しさも超え、彼女たちは前に進み始めていた。

「結果として負けたとしても、悔いはありません」

 最後は胴上げで小川先生を送り出したい。描いた理想通りのフィナーレを迎えることはできなかったが、敗れた直後も、少し時間が過ぎても、小川監督は一貫して言い続けた。

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「本当にいいチームをつくってくれた。こんな素晴らしいチームは今までないと言えるぐらい、最後の最後で本当にいいチームをつくってくれたんです。ただ強い、勝ったというだけじゃなく、1年生から3年生までが同じ役割を担って、お互い意見しやすい環境をつくるのはなかなかできることじゃない中、彼女たちはそういうチームにしてくれた。それでも本人たちは『私たちは負けた代だ』という思いのほうが強いかもしれないけれど、ここまで私から『こうしたほうがいいのではないか』と言うこともなく、選手に任せてやってきた代はなかなかありません。自分たちが考えて、努力して、本当の意味で選手主体のチームをつくってくれたし、最後まで私も自分の姿勢を貫くことができた。結果として負けたとしても、悔いはありません」

 

 勝つことだけがすべてではなく、遺したものは計り知れない。華々しい戦績のみならず、巣立って行った1人1人がトップカテゴリーばかりでなく、さまざまな場所でバレーボールを続けていること。指導の道に進んでいること。場所は違えど、それぞれが今だけを見るのではなく、大きく、長所が活かされるような未来へつなげるべく、これからの選手を育てていくはずだ。

 そして過度な重責を背負い、涙で終えた3年生たちもどうか、同じようにバレーボールを愛し、この苦しい経験をも「よかった」と振り返ることができるようなこれからを歩み続けてほしい。もちろんこの先「下北沢成徳」のユニフォームを着て、目指すべき目標へ向かっていく選手たちも同様だ。

 3月から4月へ。新年度の始まりと共に、女子バレー界の1つの歴史が幕を閉じる。

 どうかこれからも、小川監督が40年という長い時間をかけて蒔いた種が芽吹き、太い幹のもと、大輪の花が咲きますように。ただそう願うばかりだ。

撮影 杉山拓也

◆現在配信中の「週刊文春 電子版」では、下北沢成徳OGの荒木絵里香さん、大山加奈さん、木村沙織さんが小川良樹監督の勇退に寄せた勇退コメントや、4人での記念ショットの数々を限定公開しています。

この記事の詳細は「週刊文春電子版」でお読みいただけます
日本バレーを作った男|下北沢成徳高校バレーボール部監督 小川良樹

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