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本田さんにしろ、伊藤君にしろ、普段から意識している相手なので

――弟弟子の伊藤匠五段が1年早くC級1組に上がりました。

斎藤 伊藤君の昇級はかなり刺激になりましたね。彼が上がった時に抜かれちゃったなとは思ったのですが、その気持ちがどこからきているんですかね……。悔しいというのはまた別の感情だったんですけど、つらさは感じていましたね。

――弟弟子に抜かれるというのは、他の後輩に抜かれるというのとはまた違いますか。

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斎藤 彼とは小学生からの仲ですが、今まで先に行かれたことはありませんでした。抜かれたとハッキリ思った瞬間は、彼が新人王を獲ったとき。彼の表彰式に参加した際、壇上で師匠と彼と私の3ショットで撮影したのですが、笑顔が上手く作れなかった記憶があります。

いまも悔やまれる弟弟子との一局。2022年4月27日、竜王戦6組ランキング戦での伊藤匠五段戦 ©相崎修司

――類似のケースでいうと、本田五段がデビュー1期目で棋王に挑戦を決めた時はどのようなものでしたか。

斎藤 やはり素直には喜べませんでしたね。ちょうど自分の負けが込んでいた時期だったこともあり、彼はプロになってすぐに活躍したのに、自分は1年間何をやっていたのかと、悶々としていました。同門の活躍を喜ぶことができるようになるのは、もうちょっと年を取ってからなのかなと思います。

 本田さんにしろ、伊藤君にしろ、普段から意識している相手なので。伊藤君とは昨年の4月に竜王戦でぶつかり、彼の勝ちっぷりがすごかったので、自分が止めてやろうと思っていましたが、気持ちが空回りしました。普段指し慣れない形を敢えてぶつけたのですが、普通に戦うべきだったかなという若干の後悔はあります。

(宮田利男八段の大師匠に当たる)金易二郎名誉九段ゆかりの将棋盤を囲んで。兄弟弟子の本田奎五段(右端)、伊藤匠五段(右から2人目)の姿もある ©相崎修司

理想の将棋と現代将棋のはざまで

――斎藤さんご自身が考える将棋、棋士の理想像とはどのようなものでしょうか。

斎藤 自分は誰も思いつかない手を指した時に喜びを覚えるタイプです。序盤でバシバシ新手を指して勝ち、それでファンの方に喜んでもらえればと思います。

 一局の将棋としての理想は、序盤から技をお互い掛け合ってかつバランスが取れ、最後は終盤勝負になる華やかな将棋というものです。ただ、先ほども言いましたけど、現代将棋はそうなりにくく、自分の理想とは遠い将棋を指しているので、そこは悩みですね。工夫次第で理想を実現できるとは思いますから、それを模索していきたいですね。