松本清張賞を史上最年少で受賞、デビュー作『烏に単は似合わない』から連なる「八咫烏シリーズ」が累計180万部を超えた阿部智里さん。4月19日に作家生活10周年を記念した豪華ファンブックを刊行。さらにトークショーつきの展覧会を開催する。

 シリーズのヒットで人気作家となった阿部さんだが、この10年間は「本当にあっという間」だったという。

「7、8歳のころから作家になりたくて、プロになれなかったらどうしようとずっと不安な時期を過ごしていたので、デビューしてからは楽しいことばかりで体感はすごく速かったですね。でも、今回ファンブックを出していただくことになり、収録されるインタビューや対談などを読んでいたら、『こんなことあったんだっけ』というのが意外に多くて。思ったより濃い10年間を送っていたんだな、と」

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阿部智里さん

阿部智里「八咫烏シリーズ」ファンBOOK』(文藝春秋)では、八咫烏シリーズ既刊11冊(本編9冊、外伝2冊)の軌跡を追うとともに、現在、シリーズの装画を手掛けている名司生(なつき)さん、コミカライズを手掛ける松崎夏未さんなど「チーム八咫烏」の面々も登場。装画の創作過程や、コミカライズをめぐる対談も掲載される。

「名司生さんは、いつも私が想像した以上のものをどんどん出してくださるんです。今回、装画の創作過程をラフイラスト含めて掲載してもらいましたが、これを見ればどのようなやり取りを経てファンタジーの装画ができるのかが分かると思います。私の作品だけでなく、装画自体に興味がある方にもおすすめです」

『阿部智里「八咫烏シリーズ」ファンBOOK』(オール讀物責任編集)文春ムック

 松崎夏未さんは、まだプロの漫画家ではなかった時代に『烏に単は似合わない』に登場する四姫のイラストをブログにあげていた。当時、阿部さんに「発見」されたというこのイラストも、ファンブックに掲載されている。

「松崎さんが描いた1人のキャラクターの絵を見て、これだ!と思ったんです。この方にコミカライズしていただけたらな、と思っていたら、なんと数年後に実現することになって。今は松崎さん以上に上手に八咫烏シリーズをコミカライズできる人はいないだろうと思っています。彼女はオリジナル作品も描ける方なので、本編にないオリジナル要素も本人の解釈で入れてくれているんですけど、それがなんの違和感もないし、私は大好きなんですよね。同じクリエイターとして尊敬していますし、ずっと八咫烏シリーズに関わっていて欲しいです」

 展覧会では二人の原画、さらに「オール讀物」で外伝の挿絵を手掛ける鈴木雉子さんの原画が展示される。会場で行われるトークショーは阿部さんと「チーム八咫烏」のメンバーとの対談形式となる。

「私の語りたいことはぜんぶファンブックに書かれているので、当日はみなさんのお話を引き出すことに集中します」

あべちさと/1991年群馬県前橋市生まれ。2012年、『烏に単は似合わない』で松本清張賞を受賞。デビュー作から続く壮大な異世界ファンタジー「八咫烏シリーズ」は第2部へと突入。22年刊行の『烏の緑羽』までに累計180万部を超える大ヒット作となっている。ほかの作品に『発現』。

INFORMATION

阿部智里「八咫烏シリーズ」展覧会
展覧会は文春ギャラリー紀尾井町にて4月21日(金)、22日(土)。トークショーのアーカイブ配信、記念グッズ販売もあり。
https://books.bunshun.jp/articles/-/7834