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 また、1992(平成4)年11月1日には、神奈川県にある丹沢の大山でハイカーが雨宿りをしていたあずまやに雷が落ち、ひとりが死亡し、10人が重軽傷を負うという事故も起きている。それまでは、雷に対して建造物内にいれば安全だと思われていたが、避雷設備のないあずまやのような建造物の場合は、この限りではないということを知らしめた事故だった。

「早発早着」を徹底し、夏の午後は行動を避ける

 山で雷が恐ろしいのは、雷雲の位置次第でどこにでも落ちる可能性があるうえ、安全地帯といえるのが山小屋ぐらいしかなく、ほかに逃げ場所がないからだ。そこで山に登るときには、できるだけ早めに雷の発生を予知し、遭遇する前に安全な場所へ避難することが重要になってくる。

 そのためには、山に行く数日前から天気予報で、大気の不安定な状態が続いていないか、雷雨の予報や雷注意報が出されていないかをチェックする必要がある。もし雷のリスクが高そうな場合は、行動時間が短くなるよう計画を練り直す、登る山を変えるなどして、なるべくリスクを低減させるようにすべきだろう。

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 夏山で雷雲が現れるのは、たいてい午後になってからなので、登山の原則である「早発早着」を実践し、なるべく朝早くから行動を開始し、午後の早いうちにその日の目的地に到着するように計画を立てることも大事だ。

 ここで取り上げた事例では、通常よりも早い昼前に雷雲が発生したが、越中のパーティは当初の計画よりも30分ほど遅れてその日の行動を開始していた。もし計画どおりに出発していたら、無事ヒュッテ大槍に逃げ込めていたかもしれない。たった30分の時間差が生死を分けることにもなりうるのが、山の怖さでもある。

雷情報をこまめに入手することが回避に役立つ

 さらに行動中は雲の様子にも注意を払うことが必要である。積雲が発達して積乱雲になると、雷雨に見舞われる可能性が高い。積乱雲との距離が近い場合は、早急に最寄りの山小屋に避難すべきだ。かすかに雷鳴が聞こえる、アラレがパラパラと降ってくるなど兆候が現れたら、雷の危険がすぐ身近に迫っており、一刻の猶予もない。

 今は山の中にいてもスマートフォンなどで気象情報サイトをチェックできる時代なので、これを予知に活用するのも有効な手段だ。雷情報をこまめに入手することが回避に役立つ。

 なお、ラジオのAM放送は約50キロメートル離れた雷からの電波雑音を受信することができる。もし携帯ラジオを所持していて、なおかつ雷のリスクがありそうなときは、ラジオをつけながら行動し、激しい雑音が入ってきたら、ただちに避難を開始するようにしたい。