「この日までは生きようって決めていた」
自分よりも大変な人がいっぱいいると言う心菜さんは、過去にも2度、自殺を図ったことがありました。1回目は18歳の高校卒業後、2回目は20歳の成人式の日でした。
心菜「自分の中で節目があって、この日までは生きようって決めてて」
「18歳も、成人式の日も、前もって、自分が終わる日にしようと決めていたのですか?」
心菜「はい」
「なぜその日?」
心菜「なんとなくです……」
「そして、今回だったのですね」
心菜「はい、でも失敗しちゃいました」
「失敗してくれてよかったです。カウンセリングに来ようと思ってくれたのは?」
心菜「ずっと死ぬことばかり考えてるのって、しんどいじゃないですか」
「しんどいのは減らしたいと思ったのですね?」
心菜「まあ、どうせ生きてるなら」
最初は口ごもった様子でしたが、喉のつかえが外れたのか、徐々に心の内をつぶさに話してくれるようになっていきました。
友だちは多く、大学の先生とも話す機会はあるとのことです。
自分の「外見も性格も、存在自体が嫌です」
「このようなつらい話をできる人は、他にいますか?」
心菜「いいえ」
「誰も知らないですか?」
心菜「はい。今日はじめて話しました」
「友だちや先生には?」
心菜「心の暗い部分は見られたくないっていうのかな、そんな感じがしています」
「ではみんな、悩みのない明るい子だと思っているのでしょうか?」
心菜「そうじゃないかと思います」
「心菜さんは、自分のことが嫌いですか?」
心菜「はい、嫌いなところばかりです」
「どんなところが嫌ですか?」
心菜「外見も性格も、存在自体が嫌です」
「そうなっていった背景事情を知り、自分のことが認められるようになっていくのが、カウンセリングの目的になるでしょう」
心菜「なれるのですか?」
「目指すべきだと思います。ただ、一朝一夕にいくものではありません」
心菜「はい、わかります」
「しばらく通うことは可能でしょうか?」
心菜「はい、できます」
「カウンセリングに行くことは、親は知っていますか?」
心菜「実家に帰ったときに言うかもしれません」
「ということは、今日の費用の支払いは?」
心菜「自分です」
「大学生ですよね。継続となると大変なので、親の援助が受けられるといいかもしれません」
心菜「貯金があるから大丈夫です」
こうして初回のカウンセリングを終えた心菜さんとの間で、自己否定を和らげることを目標として、しばらくは毎週通ってもらうという確認がなされました。