文春オンライン

AI時代をどう生き抜くか?激動のコンサル業界を12年間サバイブした男の「全ビジネスパーソンに伝えたいクビにならないスキル」

2023/04/29

source : ライフスタイル出版

genre : ライフ, 働き方, ライフスタイル

note

たいていの「怒られ案件」は全部経験した

――凄まじいですね。失敗体験も多かったんですか?

メン獄 あらゆるタイプのミスをしましたね。一番最初は、官公庁の公共系のサービスのシステム開発をやる部署にいて、霞が関との仕事が多かったんです。官公庁向けの納品物は、キングファイルと呼ばれる10センチ以上の分厚いファイルで提出する必要があって、期日までに印刷して持参するのですが、それが提出直前の明け方、右開きの資料にすべて左開き用の穴をあけてしまい……。めちゃくちゃ先輩に怒られながら、朝4時に大量に印刷し直しましたね。

 データセンターを訪問したときは、指紋認証がないと入れない地下空間になぜか迷い込んでしまい、携帯も通じない謎の空間から出られなくなって、1時間以上行方不明になって迷惑をかけたこともありました。

ADVERTISEMENT

 極めつけは、新人のときNECが日本電気のことだと知らなかったんですね。ある日部署に「日本電気です」って電話がかかってきたのを、どこかの家電量販店の営業電話かと思って「仕事中にやめてください」とガチャ切り。先輩にぶち殺されそうになりました(笑)。

――アハハハ…。

メン獄 たいていの「怒られ案件」は全部経験済です。私は千葉の片田舎出身なんですが、大学時代に音楽で食っていけると思って挫折した元私大バンドマンで、数字にからっきし弱かった。そんな相当出来が悪かった自分でも、先輩たちに必要な型を叩き込まれて2年もすると、ある程度定型化されたパターンで動けるようになり、3年目以降は、大きなお金が動く案件の提案などもどんどんできるようになりました。

 今では許されないようなブラックな環境でしたが、ある種、限界労働が仕事の刃を鋼のように鍛え抜いてくれた側面もあります。ただ、人の心のキャパシティはそれぞれなので、これからコンサルタントを目指す人たちにそのまま真似してほしいとは思いませんが。

――先輩や上司たちも限界労働戦士だった?

メン獄 みな誇り高き戦士でした。一番象徴的なのが3.11のときで、大きく揺れてるのに、みんな避難しようとも帰ろうともしないんですよ。棚からガンガン荷物が落ちてくるのに、頑なにパソコンを閉じない。そんな光景に、派遣社員さんが動転して「みんな死んでしまう!」って叫びました。

 さすがにやばいと思って、ぞろぞろと外に逃げたんですが、数えると部署のメンバーが1人見当たらないんですね。「あれ? あの人いないね」と、私が非常階段を駆け上がって助けに行ったら、まだじっとパソコンを見ている。