「スペシャリティ」を追求するのも古典的なサバイバル術の一つです。会計やセキュリティ、5Gの次の6Gの通信技術など、なにか一本専門領域の技術にたいする深い知識をもつことです。ChatGPTであっても少し専門的なことを質問すると平気で間違ったことを回答するので、専門性の高い知見へのニーズは少なくありません。
例えばある電話マニアの先輩コンサルタントは、もともと携帯電話会社のハードウエア部門にいて、iPhoneの規格を知り抜いているし、電波の基地局を見ても「あれはどこどこのメーカー製の何型だよ」というくらい詳しい。当然、電波法にも精通し、業界のキーパーソンとも仲がいい。特にその領域の有識者たちが、ネット上に公開されないクローズドな会議で何を話しているのか、という泥臭いところまで踏み込んでいる専門家であれば、たとえ表層的な知識がAIによって即座に得られるようになったとしても地位を奪われることはないでしょう。
AI時代でも「クビになりにくい」人の特徴
――AI時代には何が強みとなるのか、興味深い指摘ですね。
メン獄 さらに言うと、今後は「コミュニケーション能力が高い人」の需要がさらに上がると思います。AIを使いこなすためにはAIがわかる言葉で、命令文をかけなければいけない。これは対人間でも機械でも変わりませんが、どうやったら動いてもらえるのかを考えて的確に伝えられる人は、AIを自分の分身としながら仕事の出力を高められるでしょう。
簡易なプログラミングのような「少し調べないとできないこと」や、Microsoft 365を使った資料作成等の「慣れないと時間がかかること」は、今後どんどん「AIに頼めばすぐできること」に移行します。さほど専門性の高いことでなければ誰がやっても同水準の作業が短時間でできる世界になったとき、同じお金を出すならこの人に依頼したい!と思わせるような人間力がより一層重要になってきます。
事務はAIにやらせて、人間はなるべくお客様とオフィスで時間・空間を共にするようにした方が良いのかもしれませんね(笑)。
ただ、究極的には「もらっている給料以上の仕事はやっているので、気に入らないならクビにすれば良い。いつだって自分自身で会社でも事業でも作ってやる」と思えるくらいの気概でやれている人というのは、仕事に妙な迫力を帯びるので、クビになりにくいものです。“身構えている時には、死神はやってこない“ので。
――そうしたレベルで仕事のスキルを育てるのはハードルが高そうですね。
メン獄 特にリモートワークが中心になって以降、コンサルタントは「普通こう考えて動く」といった暗黙の了解を共有する場が奪われてしまった。また、直接的な物言いをするとハラスメントと受け止められかねないこともあり、若いスタッフとのコミュニケーションを面倒臭く感じてしまう中間層が増えたことが、人材育成という観点からは大きなチャレンジになっています。