弁護士から「返さなくてなにか困ることあるんですか?」
都内で自営業を営む森下将さん(仮名・50歳)は、かつて複数の消費者金融から金を借りまくり、総計500万円以上の借金をつくりあげたという。
「20代後半で正社員だった時、何かあったときのためにと10社ほどの消費者金融のカードを申し込んでおいたんです。当時の給料は40万円弱なのに、借りられる最大枠は800万円あったので、『俺は800万の男だぞ』なんて自負もあったりして」
気が大きくなった面もあったのか、森下さんはそのまま貯金していた100万円を元手にデイトレードにのめり込み、信用取引で常に約300万円を動かす状態に。だが、これが悲劇の始まりだった。
「最初は調子がよかったのに、2006年に起きたライブドアショックのせいで全てパーに。動かしていた300万円に対して必要な証拠金は100万円でしたが、一気に下落したために追証がどんどん重なっていき、非常時だからとカードを使いまくって補填したんです。そのうち、『A社に返済するためにB社のカードを切る』というサイクルができあがっていきました」
こうして、気づけば森下さんの追証額は650万円まで膨らんでいき、年利20%のカードローンの支払いは利息だけで月10万円超え。首が回らなくなる少し前に会社を退職していたため、多少の金額すら払える目処は皆無。「自己破産」の4文字が頭を過ぎったこともあったという。
「毎月複数社から届く督促ハガキに、毎日かかってくる取り立て電話……。もうメンタルも病んできて、素人知識では解決できないと思い、債務整理を専門とする弁護士に相談にいきました」
すると、森下さんは思わぬ助言を受けることになった。
「弁護士から、『返さなくてなにか困ることあるんですか? あなたには今、迷惑をかける会社や家族もいないし、差し押さえられるような金もモノもない。なら、自己破産なんかして信用情報を地に落とすよりは、どう考えてもバックレたほうがいい』と言われました。今となっては倫理的にもどうかとは思うんですが、当時の僕はこの言葉にすがるほかありませんでした」