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地上波全局チェック 「ジャニー喜多川氏の性加害」でテレビ報道の“配慮”はあったのか

地上波全局チェック 「ジャニー喜多川氏の性加害」でテレビ報道の“配慮”はあったのか

トップで伝えない民放番組多数。“忖度”や“横並び姿勢”に変化は……?

2023/05/18
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「街の声」を入れているか

 筆者が注目したもう一つの点は、報道の中で「街の声」が入っているかどうかだ。

 街頭インタビューや街角インタビューと言われる「街の声」は、何か大きな出来事が起きるたびに人々の反応を尋ねて番組の中に入れていくスタイル。どんなテーマでもお手軽に「人々の反応」を入れることができるのでやや安易な方法ともいえるが、ワイドショーやニュース番組などで昔からある定番のテレビの報道手段だ。

 2014年に当時の安倍晋三首相が衆議院を解散し、総選挙に突入するというタイミングで自民党がNHKや民放キー局に公平中立、公正を要請する文書を出した。安倍首相が出演したTBSの番組において、アベノミクスについて質問した街頭インタビューの編集が恣意的だったという評価が自民党側にあったため、要請の内容でも細かく「街角インタビューでの公平中立、公正」が注文内容に入っていた。

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NHK総合「ニュースウォッチ9」(5月15日)より

 この頃から、各局は「街の声」の扱いには神経質になる。“政権”や“政治”に関わる報道では、与党や官邸の顔色をうかがうようになった。局によって温度差はあるが、10年以上経った現在でも政治に関係することで「街の声」をあまり使わない傾向が各局で続いている。背景にあるのは自民党政権という大きな「権力」へのおもんばかりや忖度だ。

 一方、ジャニーズ事務所もテレビ局にとっては大きな「権力」といえる。「街の声」の使い方次第で、「権力」の側の怒りを買わないとは言い切れない。自民党と同じような忖度が働いた可能性がある。

 今回、「街の声」を登場させたのは、NHKの「ニュースウオッチ9」、日本テレビの「news every.」、TBS「Nスタ」「news23」だけだった。

日本テレビ「news every.」(5月15日)より