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 どのような相手でも神格化せずに真正面から向き合う。簡単なことではないはずだが、それを藤井は中学生のころから実践してきたことには驚かされる。

藤井が考える「自身の伸びしろ」とは

 藤井は公式戦を390局指して、すでに320回以上勝っている。勝負ごとでは「負けて強くなる」などといわれ、実際にそうした面もある。しかし、将棋界の第一人者たちは勝ちまくってさらに強くなってきた。藤井は2割弱の敗戦だけでなく、勝った対局もそれに満足せず、見つけた課題を少しずつ改善して棋力を上げている。

 2022年10月に行われた中日新聞などの王位戦主催紙によるインタビューで、自身の伸びしろについて、「将棋はすごく奥が深いゲームで、伸びしろ自体はたくさんあると思う。いま見えている課題を克服できれば、レーティング(対戦競技の実力を相対評価で示す指標)で100点とかそれ以上の伸びしろがあると思う。今の課題を修正できるように意識して取り組みたい。また、その過程で新たな課題に向き合っていけたら」と答えた。

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 レーティングの100点差を勝率で表すと64%にあたる。藤井は将来、現在の自分に3回に2回勝てる力をつけることが可能だと考えているのだ。55%勝てるようになるのも大変なのだが……。

 実は、藤井は2018年末に関西将棋会館のTwitter企画で、2019年の目標を「来年は、今の自分に65%勝てる強さを目指します」と記している。

関西将棋会館のTwitterより

 藤井の言葉からは、彼が何年も前からスタンスを変えずに進み続けていることがわかるだろう。藤井が色紙や書の右肩に押す関防印は、果てがないという意味の「無極」。藤井がどこまで突き進んでいくのか。長い戦い、成長をこれからも見ていきたい。

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