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 ただ、この「第2弾」には既存の健康保険証を廃止してマイナンバーカードに統合するという「荒技」の交付率アップ策がセットになっていた。このため保険証が統合されるなら仕方ないと申し込んだ人もいる。公金受取口座は同年3月28日からマイナポータルで登録できるようになったばかりだった。

 また、総務省は自治体ごとにカードの交付率を発表し、2023年度から地方交付税の配分額を決める時の「算定に反映することについて検討していく」と表明した。「カードの交付率が低い自治体は罰として地方交付税を減らされる」と恐れた市町村は目の色を変えた。押し売りの営業さながらに、「カードの手続きをしてあげるから、自宅を訪問していいか」と市民に電話して回った市まであった。

 欲望と恐怖がセットになった誘導策で、カードの交付率はどんどんアップした。交付窓口となった市区町村には住民が殺到し、駐車場からあふれた車の誘導係として担当課以外の職員が動員された自治体もある。

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 だが、「政府があれほど荒っぽいことをしたのだから、現場の市区町村でミスが起きないわけがない」。政府が誘導策を実施する前からカードを取得していた50代の会社員は自治体に同情的だ。

 そして実際にミスが起きる。公金受取口座の誤登録問題を最初に公表したのは福島県福島市だった。

福島市役所

見知らぬ人の口座に紐づけられている…!

 市役所が事態を把握したのは2023年4月10日。公金受取口座を登録しようと窓口に来た市民が、見知らぬ人の口座に紐づけられていたことに気づいた。

 デジタル社会は自己責任の色彩が濃い。申し込みなどはネット上で利用者自身が行うのが基本だ。自分でサイトにアクセスして、マニュアルを読み、間違いがないよう操作する。マイナンバーカードの関連手続きもそうだった。住んでいる市区町村の担当課でカードの交付を受けたら、自分で二つのサイトにアクセスして登録や申請を行わなければならなかった。

 まず、政府が開設したマイナポータルのサイトで、マイナンバーカードに健康保険証や公金受取口座を紐づけて登録する。それが終わったら、マイナポイントの申し込み用サイトを開いて、2万円分の申請手続をする。

 しかし、そうしたウェブでの手続きが苦手な人もいる。高齢者は特にそうだ。しかも、手続きにはマイナンバーカードのICチップをスマートホンの近距離無線通信(NFC)機能で読み取らなければならず、古い機種やガラケーには機能が備わっていない。パソコンにカードリーダーを接続すれば、画面上での作業もできるが、カードリーダーを持っている人は多くないだろう。

 このため多くの市区町村では、カードの交付窓口とは別に、ポイント申請の支援窓口を開いている。ここで健康保険証や公金受取口座への紐づけ作業を手伝い、ポイントの申請手続きも手取り足取りアドバイスしていた。

 福島市のミスはこの支援窓口で起きた。

 登場人物が2人いるので、仮にAさんとBさんとしておく。

 Aさんが支援窓口に来たのは2022年の夏頃らしい。