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「国は現場感のないまま制度設計し、市区町村にやらせるだけ。泣くのはいつも住民と現場の職員です」マイナンバーカード問題の傷口を広げた“登録システムの重大欠陥”

「国は現場感のないまま制度設計し、市区町村にやらせるだけ。泣くのはいつも住民と現場の職員です」マイナンバーカード問題の傷口を広げた“登録システムの重大欠陥”

マイナカードの混乱、福島に聞く#1

2023/06/15

genre : ニュース, 社会

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なぜミスは起きてしまったのだろうか?

 窓口の支援員は、Aさんのマイナンバーカードを、パソコンに接続したリーダーで読み取り、マイナポータルのサイトでAさんの情報画面を開いた。まずはカードを健康保険証として使えるよう手続きをする。さらに公金受取口座も登録しようとしたところ、Aさんは通帳など口座が分かるものを持って来るのを忘れていた。そのため、手続きを完了させられないまま、作業を終わらせた。

 この時点でAさんの情報が表示されたマイナポータルのサイトからログアウトするよう、デジタル庁が示したマニュアルには書かれていた。ところが、支援員はログアウトのボタンをクリックしなかった。作業の途中でウインドウを最小化していたようで、Aさんの画面が消えたと誤解していたらしい。

 次に同じ窓口に順番を待っていたBさんが着席した。支援員はパソコンの画面に作成したショートカットをダブルクリックして、マイナポータルのサイトを開く。これはマニュアルにある通りだ。そしてカードリーダーでBさんのマイナンバーカードを読み取り、作業を始めた。

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 同じように、カードを健康保険証として使えるよう手続きをする。さらに公金受取口座も登録した。が、パソコンの画面にはAさんの情報が表示されたタブも、最小化されたまま残っていたようだ。こうした場合、マイナポータルのサイトでは、Bさんの公金受取口座に登録したつもりでも、ログアウトされていなかったAさんに登録されてしまうのだという。

 結果として、中断されていたAさんの公金受取口座の手続きが、Bさんの情報を「入力」することで完了した。Bさんの公金受取口座には何も登録されないままになった。

 にもかかわらず、そうなってしまったことにBさんも支援員も気づかない。Bさんの情報はちゃんと入力されたと思い込んでいる支援員は、引き続き同じパソコンで、Bさんのマイナポイントを申請する作業に移った。そして新たにマイナポイントの申込サイトを開いて手続きしようとしたが、「まだ公金受取口座の登録がされていないので、こちらで登録して下さい」という内容のエラーメッセージが出た。

 その注意書きをクリックすると、マイナポータルで公金受取口座の手続き画面が表示される。

「おかしいな、登録したばかりなのに、なぜだろう」と首をひねりながらも、支援員は「もう一度」、Bさんの公金受取口座に登録した。今度はBさんの口座として入力されたので、Bさんの口座はAさんとBさん2人のマイナンバーに紐づけられ、二重登録されてしまったのだった。

Aさんが異変に気がついたのは半年以上経ってからだった

 同じ口座が別人に登録されると、エラーが表示されたり、二重登録できなかったりするシステムにはなっていなかった。

 それから秋が終わり、冬が過ぎた。

 2万円分のマイナポイントがもらえるマイナンバーカードの取得申請は、2回の期間延長を経て、2023年の2月末で終わった。それまでは、どこの市区町村も窓口が非常に混雑した。