東武鉄道は7月15日(土)から、新型特急「スペーシアX」を運行する。最上級のコックピットスイート(個室)からスタンダードシートまで6種類の座席を備え、グループ旅行からビジネス移動まで対応する。
指定席は乗車日の1カ月前から予約可能だ。7月9日現在、個室とコックピットラウンジは1カ月後まで完売しており、プレミアムシートとボックスシートに若干の空席がある。スタンダードシートも出発日が近いほど満席だ。どうやら上級クラス席は発売と共に売り切れているようだ。
「個室人気」が「スペーシアX」のハイクラス嗜好を後押し
好調なスタートの理由は「スペーシアX」の新しさとハイクラスな旅のイメージ。そして新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行によって旅行需要が回復したこと。さらに目的地の東武日光といえば日光東照宮である。大河ドラマで話題の徳川家康ゆかりの地であることも功を奏したといえそうだ。
もちろん、日光そのものに観光の魅力が大きい。江戸時代から日光詣では将軍、大名だけではなく庶民にも親しまれていた。明治時代になると中禅寺湖も含めて多くの外国人が避暑地として訪れた。1999年に「日光の社寺」が世界遺産となり、国際的観光地としてますます人気の旅行先になった。
じつは「スペーシアX」だけではなく、これまでどおり先代車両「スペーシア」が充当される特急「けごん」も個室は1カ月先まで満席になっている。この根強い「個室人気」が「スペーシアX」のハイクラス嗜好を後押ししたと言える。
30年周期だから先進的に
「スペーシアX」誕生は、旅行需要の回復や家康ブームと重なりグッドタイミングだった。もっとも、東武鉄道がこれを予見していたわけではない。鉄道車両の製造や新しいサービスの準備には時間がかかる。もっと前から準備していた。
「スペーシアX」の誕生の背景、今後の運用について、東武鉄道の池田直人氏に聞いた。池田氏は、東武鉄道株式会社の鉄道事業本部で営業統括部部長兼営業部長を務める。いわば東武特急のプロデューサーだ。
「プロジェクト自体はコロナ前から始まっていて、コロナ禍で中断しようかと一度は考えました。しかしやっぱり東武鉄道にとって日光特急は大切です。観光特急という意味では、少しグレードアップした列車をやっていく。日光行き看板特急はそうやって30年おきに作ってきましたし、先代スペーシアの置き換え用としても、やっぱり必要だよねって話になりました」(池田氏)