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「社内でも(スペーシアをすべてリバティで置き換えるか)議論はありました。(乗客が減るなかで)突き詰めていくと、コスト削減するなら、もう床に絨毯を貼らないとか、3両でいいという話ももちろんある。経営的にはそれをやらなきゃいけないかもしれない。一方で、お客様の『特別な列車で旅をしたい』という期待感を受け止めたい。だからスペーシアXをやりたい。経営陣にもそういう形で説得しました。だからこそ経営陣からの期待も大きいので、現場は頑張っていかなきゃいけない(笑)」(池田氏)

 関東の私鉄特急はモノクラスだ。小田急の展望席は特別だけど、グレードとしては他の席と同じで先着順になっている。「スペーシアX」の6種類の席とカフェカウンターの設置はかなり思い切ったアイデアだ。

先代スペーシアの個室は、小さな子ども連れの女性に人気

「関東の有料特急も関西の有料特急も体験して、特に近鉄さんの『しまかぜ』や『ひのとり』、京阪さんの『プレミアムカー』は参考になりました。例えば5号車(スタンダードシート)に乗ったら次は6号車(個室)に乗りたいねとか、次はプレミアムシートに乗りたいねとか。1回乗ったら別の座席にも乗ってみたい、その価値を売りにできるって、なかなかないと思います。先代スペーシアは、座席と個室って違う需要だったんです」(池田氏)

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近鉄特急「しまかぜ」はサービスの参考になった列車のひとつだという (杉山淳一撮影)

 確かに、先代スペーシアの個室は、小さな子ども連れの女性に人気があった。

「強みという面で、今、新造車を出す会社が少ないので、注目を受けやすいのかなと思っています。これは東武だけではなく、鉄道にもう一回目を向ける機会になるでしょう。鉄道の旅を提案する責任として頑張っていきたいなって思っています」(池田氏)

日光の食材にこだわったビール、コーヒー、フードを開発

 各社が車内販売を中止している中で、カフェカウンターも意欲的なサービスだ。

「正直に言うと、ビュッフェとかどうしようって考えて、(やりたいけれど)利益が出る出ないっていうのは考慮しなくちゃいけない。食べ物を扱うと売れ残りの廃棄があって利益を押し下げるおそれはある。この課題を解決するためには、お客様により多く喜んでご利用いただく必要があります。

日光の地ビールだけではなく、全国各地のブルワリーとコラボレーションする ©佐藤亘/文藝春秋

 そこで『移動時間も日光を感じることができる』という、日光の食材にこだわったビール、コーヒーそしてこれらに合うフードを開発しました。これらの商品で確実に利益を出して、お客さんにも経営的にも期待感を裏切らない形にしました。弁当も数量限定で出します。ある程度限定感を出して、需要を獲得していきたい」(池田氏)