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「30年おき」という歴史をたどると、1960年にデラックスロマンスカー(DRC)こと1720系電車が誕生して国鉄の日光特急に勝利した。その30年後、1990年にスペーシアこと100系が誕生した。それから33年が経過した2023年に「スペーシアX」ことN100系電車が誕生する。

 鉄道車両として30年は長生きの部類になる。投入時に先進性を重視しないと、30年後には陳腐化してしまう。先代スペーシアが30年後も現役で、いまだ他の地域の観光特急に対して遜色ない。それは当時としては最高の性能と設備の車両を作ったからだ。

昨年5月に“#アップサイクルTOCHIGI”というプロジェクトを開始

 ところで、東武鉄道は2017年に「リバティ」こと500系電車の運行を始めた。この車両も東武鉄道の特急車両だ。しかしリバティは「日光行き看板特急」ではなかった。リバティは、日光線系統・伊勢崎線系統のどちらでも使用される汎用特急だ。東武伊勢崎線、桐生線、佐野線においても運用され、観光・通勤それぞれにおいても利便性を高めた3両編成1ユニットで、併結して6両で運用できる。

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 リバティの日光行き系統はスペーシアを補完する役割である。浅草~下今市間は日光行き「リバティけごん」と鬼怒川線方面の「リバティきぬ」を併結する。あるいは「リバティけごん」と野岩鉄道、会津鉄道に乗り入れる「リバティ会津」を併結する。乗り心地の良い車両だけれども、日光行き看板特急ではない。

「地域をつなぐという意味で、やっぱり1つ(看板列車が)なくちゃだめだと。半導体不足など厳しい状況もあったなかで、メーカーさんにも頑張っていただいて良かったと思います。

 じつは昨年5月に“#アップサイクルTOCHIGI”というプロジェクトを始めました。旅行会社や栃木県の企業とともに、新たな旅行やライフスタイルを共創し続けていきます。これは“スペーシアX”の投入を契機として呼びかけたので、無事運行を開始できるところまでこれたという意味でも良かった」(池田氏)

池田氏――関東だけではなく、関西の私鉄特急も見聞したという ©佐藤亘/文藝春秋

参考にしたのは関西のあの列車

 2000年代に入って、関東の大手私鉄は看板特急車両の更新を始めた。小田急電鉄は2005年に先頭展望車のロマンスカー50000形VSEを投入、そして2008年には東京メトロ直通という新コンセプトの60000形MSEがデビューした。2010年に京成電鉄が新型スカイライナーの2代目AE形、2017年に小田急が70000形GSE、2019年に西武鉄道がLaviewと続き、“関東の特急電車新時代”という趣があった。

 この流れの中で、東武鉄道も2016年にリバティを投入している。しかし、スペーシアの更新用としては違和感があった。