「痩せていることで人生がうまくいく」みたいな言説を聞くたびに苦しい
河野 言われがちなのが、「完璧主義だから摂食障害になった」と「親のせいで摂食障害になった」ですね。だけど、そんなことはないんじゃないかなって。
いま、私は食じゃない拠り所をどんどん増やすことで、自立できるようにしている最中で。やっぱり、人間ってなにかしら依存しているものがあるんですよね。アルコールだったり、タバコだったり、甘いものだったり、SNSだったり。私の場合は、それが「食」で摂食障害になったわけですけど、誰でもなにかのきっかけで私のようになってしまうことはあるかもしれないなと。
あと、「痩せていることで人生がうまくいく」みたいな言説はまだまだ根強くはびこっているし、それを聞くたびに苦しいですね。そうした考えをSNSで発信する側の気持ちもわかるんです。「マグカップ一杯分のサラダが美の秘訣」と発信している人って、実際にそうやって頑張ってきたからこそ伝えたいんだろうし。でも、それを盲信してしまう若い子もいるわけで。
――摂食障害は女性に多いとのことですが、その背景になにがあると考えていますか。
河野 自分への確固たる自信がつきにくい世の中だなって。実際、私もいまだに自信が持てずにいますし。常にSNSが周りにあって、他人の目を意識せざるをえなくて、「いいね!」がたくさんつくものが正しいとされているというか。
そうなってくると、本来自分が好きだったもの、自分にとって本当に大切なものに気づきにくいですよね。最近はいろんな体型があって当然といった声もあがっているけど、それでも世間一般的にいいとされる体型を目指したほうが、多くの人に認められるし、認めてもらえることが自信に直結するので。
“ルッキズム”の根深い影響は就活にも
――“ルッキズム”が影響しているところがあるわけですね。
河野 それは就活で感じました。「かわいくないと採用されない」と信じている子はたくさんいたし、「本当にそうなんだ」と思ってしまう採用現場を目にしましたし。
実際、自分もそれに迎合しそうな瞬間がありました。「見た目をきれいにしなきゃ」とか。また痩せようとまではしませんでしたけど、「見た目で不利にならないようにしなくては」って心掛けになってしまうんですよ。
――駅で“糖質の権化”であるおにぎりを食べている人を見ると「本当に信じられない!」と腹立たしかったそうですが、いまは?
河野 いまは素直に「わかるよ。美味しいよね」って思えます(笑)。
写真=深野未季/文藝春秋
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