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日本の議員の資産公開は、少なく公開して逃げることが可能

 参考までに、このPEPsで監視される対象は、内閣総理大臣や閣僚、衆参議長副議長、最高裁判所裁判官、大使や全権代表に加え、陸海空各幕僚長幕僚副長や中央銀行の役員、独立行政法人も含めて予算を国家から承認されなければならないすべての組織の役員に「現在も、過去も在籍していた者」で、かつ、その人の家族や支配する法人(海外企業やファンドも含む)です。しかも、これは最低限必要な調査範囲・対象人物です。いまの日本ではすべてが自己申告であり、また、証券会社や銀行などからの調査依頼に対しても実質的に白紙回答(拒否)できてしまいます。

 日本の議員は「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」で当選後に保有する資産の公開を義務付けられていますが、例えばブリヂストン大株主の一族で「子ども手当」の問題を起こした旧民主党の元総理・鳩山由紀夫さんは、09年の資産公開では総資産が14億4,000万円と報告されています。

 そんなに少ないわけねえだろ。

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 軽井沢の友愛山荘を営業停止してどこぞに売るらしいですが、議員が実質的に保有する資産公開は公開範囲が狭く、ある種の紳士協定であることを踏まえれば、常に腐敗しやすく、少なく公開して逃げようと思えばいくらでも可能であることも示唆されます。

 今回の中国による防衛ネットワークへの侵害においてだけでなく、日本政府の枢要な意思決定に関わるシステムには、特定の政治家や、政治家の周辺で何らかの意を受けた人物が扱う旧式の端末や古いOS経由でマルウェアなど悪意あるツールが入ってくるケースも少なくありません。これらの防諜という観点では有力者本人やその親族など周辺、あるいはお気に入りの人物などが、お墨付きを得て官邸や主要官庁・部門に出入りしてガードの低い職員に汚染されたファイルを渡すなどして海外勢力による侵入の手引をしてしまう、ということもあり得ます。

 そればかりか、なぜか政府参与としていまなお名前を連ねる人物が懇意とする中国大陸にある大学からの留学生を受け入れるよう霞ヶ関職員を官邸の一室に呼び出して請託し、なんだこれはと追いかけてみたら背景が良く分からない人物だったということもあるわけです。

 それを考えれば、確かに防衛省も落ち度というか発展途上で生みの苦しみはあるのだろうけど、実際には我が国の政府中枢もなかなかの情報ダダ洩れ具合じゃないのかという指摘も成立しますので、少なくともセキュリティクリアランスとそれに伴う倫理規程の徹底、漏洩時のアクションプランと罰則も伴う新法の設置ぐらいまでは見越していかないと、せっかく防衛費を増額したのにやってることはザルでしたということにもなりかねませんのでよく考える必要があるのではなかろうかと思います。