夏になると、人心はざわめく。そして、暑いと知りながらますます暑い南国に出かけてみたり、はたまた少しでもと涼を求めて高原におもむく。暑い場所には暑い時期に訪れてこそ真髄を知れるとも言えるから、南国に出かけることが悪いとは思わない。が、エアコンの効いた部屋からわざわざ飛び出すならば、やっぱり涼しいところがいい。そういうわけで、夏は避暑地が人気のリゾート地である。
東京近隣の高原リゾート地は、たとえば軽井沢などが有名だ。あとは清里や野辺山といった八ヶ岳、箱根方面や御殿場などもそのひとつに挙げられる。そして、栃木県と福島県の県境に近い、那須高原だ。
東京からだいたい1時間ちょっと…東北新幹線「はやぶさ」の“ナゾの通過駅”「那須塩原」には何がある?
那須高原には天皇皇后両陛下も夏場に訪れる那須御用邸があり、その意味では何よりも保守本流、伝統の避暑地といっていい。その最寄り駅は、東北新幹線の那須塩原駅だ。
東北新幹線には、那須塩原・郡山以南で運転される「なすの」という列車もある。その列車名の由来は那須高原のふもとに広がる巨大な扇状地・那須野原から。ほかにもこの一帯には那須温泉や塩原温泉といった温泉街もあり、すべてまるごと一大リゾート地になっている。
つまり、那須塩原駅は単なる栃木県北の新幹線駅というだけではなく、“那須”一帯に広がる大リゾート地の玄関口というわけだ。「なすの」という名の列車が走っているのもとうぜんのこと。それだけ存在感の大きなターミナル……なのだろう。
ただ、現実には仙台までノンストップの「はやぶさ」はもちろん通過するし、停車駅がやや多めの「やまびこ」も、那須塩原駅には停まったり停まらなかったり。だいたい昼間は1時間に1本しか停車しない。宇都宮駅が1時間に2~3本なのと比べると、いささか“格下”の感は否めない。いったい、どんな駅なのだろうか。
東京駅から那須塩原駅までは、だいたい1時間15分くらいで着く。朝と夜には那須塩原発着の「なすの」があるが、だいたいは郡山までの「なすの」か仙台までの「やまびこ」に乗ることになる。
夏も盛りの8月半ば、朝の「やまびこ」に乗ったところ、車内は指定席の通路にも立ち客が溢れる大盛況。車内放送がいつもと何か違うなと思ったら、期間限定で乃木坂46のメンバーがアナウンスを担当しているのだとか。
そんなこんなで1時間ちょっとの旅。途中小山や宇都宮でもパラパラとお客が降りてゆき、那須塩原駅でもいくらかのお客がまとまって降りた。キャリーケースを転がしている若者グループや家族連れも多く、帰省というよりは夏休みのリゾート目的でこの駅にやってきたのだろう。