たいてい新幹線駅の目の前には、東横インのようなビジネスホテルがあるのが常だ。那須塩原駅はリゾート地の玄関口だから、きっとビジネスホテルどころか星野リゾート的なホテルがあるに違いない……と思ったら、まったくそんなことはなかった。
ホテルの類いはほとんどなく、駅の周りにあるのはレンタカー屋に駐車場、あとは、ぽつんぽつんと住宅が建っているくらい。幅の広い道が碁盤の目状に走っており、この一帯が開発されたのは比較的新しいのだろうと教えてくれる。
実は、1990年代の初め頃、駅の近くに高さ120m級の高層ホテル建設計画があったという。しかし、高原リゾートの玄関口をウリにする那須塩原駅前の景観を損ない、野放図な開発の引き金になりかねないとして栃木県が反対し、実現しなかった。新幹線駅前にしては言葉は悪いが牧歌的、それが高原リゾートの玄関にふさわしいとするならば、このときのホテル計画がひとつの分岐点になったのかもしれない。
ともあれ、駅の周りをいくら歩いても、繁華街らしきものはもちろんのこと、飲食店すらほとんど見当たらない。さすがに駅の目の前にはいくつかあるが、整備された街路には、比較的新しい住宅地や駐車場があり、その向こうには田畑が広がるという、実にのどかな新幹線の駅前である。
1982年に新幹線が開業。しばらくは開発が手つかずだった「那須塩原」
駅前の目抜き通りを10分ほど歩いた先ではこれまた大きな通りと交差しており、その周辺にはさすがにドラッグストアやコンビニなどが集まっている。
ただ、ロードサイド系の飲食店が連なっているような光景は見られず、このあたりもリゾート地の玄関口といった雰囲気を保つのに貢献しているのだろう。
那須塩原駅の西口が、いまのように整ったのは実はかなり最近のことだ。新幹線の那須塩原駅は1982年に開業したが、それからしばらくは特に開発に手がつけられることもなく、それ以前とほとんど変わらない田園地帯に過ぎなかった。