2013年にもマスクは大胆な計画をぶち上げた。世界中のバッテリー工場を合わせたよりも大きなバッテリー工場を米国内に建設する、というものだ。
マスクは、バッテリー供給を受けているパナソニックと提携することを狙った。当初パナソニックは及び腰だった。そのような提携はしたことがなく、パートナーとして考えたときに、マスクはやりにくい相手に思えたからだ。
マスクとテスラ幹部は一計を案じた。パナソニック側窓口を誘い、工場建設予定地を見せた。テスラは本気だぞ、ということを示したのだ。なんならテスラは自分たちだけで工場を作る、パナソニックは置いてきぼりでいいのか、と。これが効いて、マスクとテスラ幹部は、パナソニックの招きを受けて日本を訪れることになった。
「イーロンはですねぇ、打ち合わせで地獄の業火さながらになったり…」
当時の津賀一宏社長による接待ディナーは、料亭の座敷で懐石料理だった。
しかしテスラ幹部は、マスクがどういう行動に出るか、ヒヤヒヤしていたという。
「イーロンはですねぇ、打ち合わせで地獄の業火さながらになったりするし、なにをやらかしてくれるかまったくわかりません。
でも、必要なときには、スイッチを切り替えたみたいに突然、感情も知性も豊かですごく有能なカリスマ実業家になったりするんです」
この接待ディナーでのマスクは、後者の有能カリスマ実業家バージョンのほうだった。テスラ幹部はこう振り返る。
「ちょっとびっくりするとともに、さすがだと思いました。いつものイーロンと違うじゃんって感じで」
津賀社長は、巨大なバッテリー工場に40パーセント出資すると約束した。決断の理由を尋ねてみると、こう返ってきた。
「我々は保守的にすぎます。会社は創業95年。変わらなければいけません。イーロンの考え方もいくつか取り入れないといけないのです」
テスラの社運を賭けた提携を成功させたマスク。トヨタ、パナソニックという日本を代表する大企業のおかげで、テスラは生き延びることができたのだ。
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