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 いつか自分の店を持ったら、親父とお袋を招待するという夢があったけど、それができなかったのは、ひとつ悔しいところですね。

――笠原さんのお話を伺いながら、哀しみも後悔もそのときどきの感情をそのまま受け止めて、事実を事実として認めていらっしゃるところに、強さを感じました。

笠原 こればっかりはもう、しょうがないからね。いまの若い子たちにすごく言いますよ。一日24時間、一年365日しかないし、とにかく時間を無駄に使うなよって。やりたいことは早めにやっとけという話は、自分の子どもたちにも言うし、調理師学校の授業に行っても、そういう話ばかりしちゃいますね。

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――今日は迎えてくださったスタッフのみなさんが元気いっぱいで。

笠原 もう親子でやってるくらいの若いのしかいないからね(うれしそうに)。20年前にここをオープンした頃は、スタッフとの歳の差はせいぜい兄弟くらいですよ。いまは自分の娘と変わらない歳の子ばかりで、昔とは怒り方も変わってきました。

――怒り方が変わったというのは?

笠原 昔はもうボロクソ、僕は殴ったり蹴ったりはしないけど、けっこうきつかったと思います。いまも何かあったら当然怒るけど、言い方はかなりソフトになったし、自分の子どもを叱っているような感じです。

撮影 榎本麻美/文藝春秋

3人のお子さんたちの気になる進路は……

――お子さんたちはいまおいくつですか?

笠原 長女が24歳、次女が22歳、長男が18歳。長男は大学生になって、「お父さん弁当」も終わっちゃった。しかも家を出て九州に行っちゃったから。初の一人暮らし。娘たちはまだいるけどね、長々と。

――おさみしいですね。

笠原 まあ男はさ、外で揉まれたほうがいいかなって思ってたから、別にさみしいとまではならないよね。LINEで毎日やりとりもできるし、逆にこちらが遊びに行ったりもできるし、僕も18歳から板前の修業で家を出たわけだから。

撮影 榎本麻美/文藝春秋

――ちなみに娘さんたちは?

笠原 長女はOL。次女は大学4年生で、迷走しながら就職活動してる。

――進路は、お料理関係ですか?

笠原 それが、3人ともまったく料理に興味なし(笑)。次女はカフェが大好きだから、将来自分で店をやりたいという話はしてますね。

――ご自宅での食事はどなたがつくられていますか?

笠原 いまはもうみんな大きくなっちゃったから、自分のぶんは自分でつくったり、買ってきて食べたりとか。カミさんが亡くなってから、子どもたちにとっては伯母さんにあたる、カミさんのお姉さんが一緒に住んでうちのことをいろいろやってくれてたから。

――同居してくださってたんですか。

笠原 お義姉さんのサポートがなかったら、僕もこんな仕事を続けられなかったよね。

撮影 榎本麻美/文藝春秋

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